研究課題/領域番号 |
23659910
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
島内 英俊 東北大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (70187425)
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研究分担者 |
石幡 浩志 東北大学, 大学病院, 助教 (40261523)
根本 英二 東北大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (40292221)
金谷 聡介 東北大学, 大学病院, 医員 (80375097)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 歯科インプラント / スキャフォールド / 生体模倣 |
研究概要 |
歯はその歯根表面と歯槽骨と歯根膜を介して接合し、咬合力に対する加重分散を図ることで耐久性を維持している。歯根膜は歯周靭帯とも呼ばれるように、無数のシャーピー線維が歯槽骨から根面に向かいセメント質に埋め込まれている。この様な機能的組織結合はインプラント-顎骨間結合(オッセオインテグレーション)には見られないことから、我々はインプラント表面の機能化により顎骨間との3次元的線維結合を構築することを目指し、純チタン材表面の微細構造(マイクロトポグラフィー)の構築を試み、それに対する生体組織細胞の反応を検証した。まず、10μm厚純チタン薄板に、極めてパルス幅の短いフェムト秒レーザーによる比熱加工により、規則的配列の穿孔アレイを孔径φ20μm、孔間ピッチ50μmにて約40,000個、あるいは同孔径を30μmピッチに約110,000個と、高密度に形成した。次にこれら試料上に対し、ヒト歯胚由来幹細胞を播種、72時間培養後における細胞付着と増殖能を評価した。その結果、まず対照群とした、従来品、孔径φ100μm、孔間ピッチ500μmのチタンメッシュ(Frios® Boneshield,デンツプライ(独))では、材料表面に細胞の付着が殆ど認められなかった一方、試作品試料上では、微細貫通孔をアンカーとして多数の細胞が付着・増殖し。また、その度合いは高密度の高い方が有意に増大した。純チタンは生体親和性素材である一方で、生体組織が有機的に結合するには細胞外マトリクスを模倣した微細構造を構築することが有効と思われる。本研究により、規則的微細構造に反応して、生体組織細胞は付着と増殖を促進させることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
純チタンの高い生体親和性は疑いないものの、難加工材の側面を持ち特に微細精密機械加工は困難を極める。しかも熱加工で周囲雰囲気に含まれる酸素や他の元素と容易に結合し変性し劣化するため,通常のレーザー加工が適用できなかった。しかし今回パルス幅を極限まで短縮しピークを高めたフェムト秒レーザーで純チタンに熱変性をもたらすことなく、超微細加工が可能となった。最先端加工技術がもたらした有意なマイクロトポグラフィー効果を発見したことは極めて画期的と見られ、その応用によって新たな機能性材料の扉が開かれると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は新たな着想に基づいたフェムト秒レーザーを用いたピアーシングによるチタン表面のマイクロ加工が歯根膜細胞に対し、マイクロトポグラフィー効果を発揮して増殖を誘導することを明らかにした次年度は動物実験により生体内での作用を検証していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は、実験成果で示したように共焦点レーザー顕微鏡を用いた細胞増殖応答反応の解析のために輝点追跡ソフトならびに解析用の顕微鏡ステージの構築が必要となり、物品費を多く使用せざるを得なくなった。次年度については本年度得られた成果発表を国内外で行う予定であり、その旅費に研究費を使用する予定である。また動物実験を本格的にスタートさせる予定で、特にチタンインプラント周囲の骨造成効果を明らかにしていきたい。
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