研究課題/領域番号 |
23659911
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
山本 修 山形大学, 理工学研究科, 教授 (00230540)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 生体材料 / 骨誘導因子 / 骨リモデリング / 表面修飾 / 骨接着性 |
研究概要 |
亜鉛及びストロンチウムの各イオンは,その促進シグナルとして知られているが,これらイオンが徐放するインプラントの表面処理法及び骨接着性は十分に明らかにされていない。本研究では,極めて簡易な新規ワンポット作製法を提案・採用し,イオン徐放型インプラント作製の最適化,骨-インプラント間の骨接着性・界面結合を明らかにし,既存表面処理インプラントの骨接着強度を改善した次世代インプラントの創出を行うことを目的とした。まず,亜鉛イオン徐放型インプラントのワンポット作製については,水酸化ナトリウム水溶液に硝酸亜鉛を加え,テトラヒドロキシ亜鉛錯体[Zn(OH)42-]を含む水溶液を調製する。この溶液に純チタンロット浸漬し,60℃で24h環流を行い,エタノール及び蒸留水で洗浄後,乾熱滅菌処理する方法を確立した。得られたインプラント表面は,低結晶性のルチルとアナターゼ構造の2相が共存した。一方,ストロンチウムイオン徐放型インプラントは,蒸留水中に含まれる炭酸ガスを除くために高純度アルゴンガスでバブリングし,そこに水酸化ストロンチウムを加える。この溶液に純チタンロット浸漬し,60℃で24h環流を行い,エタノール及び蒸留水で洗浄後,乾熱滅菌処理する方法を確立した。得られたインプラント表面には,チタン酸ストロンチウム相が確認された。亜鉛イオン徐放型インプラントからの亜鉛イオン徐放は,生理食塩水に浸漬した後の6h後から徐放が始まり,76hまで緩やかに徐放することがわかった。ストロンチウムイオンの徐放は,浸漬後6hからイオンが徐放し,それに伴いインプラント表面に形成したチタン酸ストロンチウム相が消失した。亜鉛イオン徐放型インプラントの骨接着性は,同一表面粗さ及び臨床用インプラントに比較して,約3倍の接着強度を示すことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の研究計画では,金属イオン徐放型インプラントのワンポット作製方法の確立を挙げており,インプラントからのイオン徐放挙動も明らかにした。従って,計画通りに研究が進展したといえる。さらに,予備実験として,作製した亜鉛イオン徐放型インプラントの骨接着性試験も行い,良好な結果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の結果にもと基づいて作製条件を選定したインプラント(計8種類:亜鉛イオン徐放型・ストロンチウム徐放型・各コントロール(2種類)×表面粗さが異なる2種類)を動物実験に用いる。麻酔下におかれた3.5~4.0kgの日本白色家兎の大腿骨に,インプラントを埋入し,埋入後4,8,12及び24週で,インプラントの大腿骨とともに摘出する。摘出したインプラントの骨接着強度(kN/mm2: MPa)を測定し,イオン徐放型インプラントの有意性を調べる。また,骨-インプラント界面部分の組織観察を行い,炎症性所見の有無を確認する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度では,動物実験による評価が中心となるため,実験動物の購入・飼育,手術消耗品の購入,共用設備の使用料に研究費を使用する。また,学会等での成果報告を行う。また,実験動物の飼育・管理のための人件費を計上した。
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