臨床応用されているインプラント表面は,骨接着性を獲得するために,ブラスト処理あるいはアパタイト被覆が施されているが,骨との接着は体内の自発的細胞分化が律速となっている。高い骨接着性を早期間に確実に獲得するには,骨芽細胞への分化,増殖及び組織化を促進させる必要がある。亜鉛及びストロンチウムの各イオンは,その促進シグナルとして知られているが,これらイオンが徐放するインプラントの表面処理法及び骨接着性は十分に明らかにされていない。本研究では,極めて簡易な新規ワンポット作製法を提案・採用し,イオン徐放型インプラント作製の最適化,骨-インプラント間の骨接着性・界面結合を明らかにし,既存表面処理の12週接着強度3~4MPaから10MPa以上に改善された高骨接着性の次世代インプラントの創出を行う。亜鉛修飾型インプラントは,ヒドロキシ亜鉛酸溶液中にチタンインプラントを60~70℃で処理することで容易に作製することができた。一方,ストロンチウム修飾型インプラントは,水酸化ストロンチウムを炭酸ガスを除いた蒸留水に溶解し,そこにチタンインプラントを投入し,70℃で処理することで作製が可能であることを見出した。これら修飾型インプラントと骨との接着性をウサギの大腿骨に埋植することで評価した。その結果,亜鉛修飾型インプラントでは12週で8MPaの骨接着性を示し,ストロンチウム修飾型インプラントでは12週で7.5MPaの骨接着性を示すことが明らかとなった。これらの接着強度は,臨床用インプラントより極めて高い値であった。さらに,亜鉛修飾型インプラント表面から溶出する水和亜鉛イオンは,骨芽細胞への分化と増殖,骨化(石灰化)の速度を加速的進める作用,すなわち新規の骨増殖因子としての機能することが見出された。
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