研究課題
再生医療の実用化には、治療効果のみでなく目的とする細胞が培養されたかどうか、あるいは治療効果を持つ細胞へと分化させたことの確認など細胞の品質管理が重要となる。しかしながら、品質管理を中心とした実用化支援技術の開発は遅れている.培養細胞の品質管理には、通常サンプリングによる破壊的検査が行われるが、本来は移植される細胞に対する非侵襲的な評価方法の開発が望まれる。これまでの研究から、細胞の形態は種類によって異なり、また分化誘導によって変化することが示唆されている。熟練者は経験的に細胞の形態から状態を判断しているが、明確な数値基準などは示されていない。本研究の目的は、細胞の画像と最新の画像解析技術を応用することにより、細胞の種類や分化度を評価する新たな品質管理システムを開発することである。初めに、最新の細胞画像解析技術を用いて分化誘導中の細胞画像から増殖曲線、細胞面積、外部刺激に対する細胞面積変化、回転運動等の細胞特徴量とその経時的変化を記録した。これらの評価を生化学的、分子生物学的機能的評価の結果と対比させることで、培養細胞の分化度や機能異常を検知する細胞診断の基準を決定し、細胞診断ソフトウエアを開発した。次に、この非侵襲的細胞診断技術を用いて、実際の臨床研究における品質管理に用いて、その有用性を検証した。骨分化は複雑な現象であり、当初限られたパラメーターのみで正確な予測は困難であった。しかしながら、ridge regression modelを用いることにより、未知サンプルのALP活性を、画像情報のみから20%未満の誤差で予測できることが示された。本研究により、実際の臨床においても細胞画像のみから骨分化度を推測することは可能と考えられた。
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