研究概要 |
歯の再生工学に、歯上皮細胞と歯間葉系細胞の体外増幅と分化能の亢進が必要である。そこで、無血清培養液の開発を目指して実験を重ねた結果、無血清での歯科再生学の進展に有用な知見を得ることができた。 ・ヒト歯髄幹細胞をoutgrowth法あるいはコラゲナーゼ法にて分離して無血清培地で培養した。初代はSTK1が、植え継ぎ後はSTK2が10%ウシ胎児血清培地よりも増殖を促進した。さらにSTK2で増幅したヒト歯髄幹細胞は従来法よりも高い石灰化能を示した(Fujii-S,Kato-Y.投稿準備中-A)。なお、歯髄幹細胞は乳歯および永久歯から分離したが、どちらの幹細胞もSTK1あるいはSTK2により10%ウシ胎児血清含有培地よりも顕著に増殖した。さらに10%ウシ胎児血清含有培地で培養した歯髄幹細胞は老化細胞の特徴である大型の扁平な細胞へと変化したのに対して、STK1あるいまSTK2で培養した歯髄幹細胞は、若い細胞の形態の特徴を長期間維持した。 ・ヒト歯髄幹細胞をヒトMSCの石灰化を促進するSTK3とインキュベートしたが、石灰化を誘導しなかった。現在、各種追加因子の影響を検討している。STK3には歯髄幹細胞の骨分化に必須であるTGF-bが含有されていないため、TGF-bにもっとも注目している。 ・ヒト歯髄幹細胞のマーカー遺伝子を明らかにした。これらのマーカー遺伝子は線維芽細胞、歯根膜細胞、間葉系幹細胞で発現せず、無血清培地で増幅した歯髄幹細胞で発現していた(Fujii-S,Kato-Y.投稿準備中-B)。歯髄幹細胞のマーカー遺伝子としては、MSX1,MSX2,TBX2,SFRP1,TGFB2,MAP3K5,PDE5A,およびENTPD1などが有望である。
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