研究課題/領域番号 |
23659919
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
牧平 清超 九州大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (80304450)
|
研究分担者 |
寺田 善博 九州大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (30038898)
篠原 義憲 九州大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (00423533)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | インプラント / インプラント周囲炎 / インプラント予後 / バイオマーカー / 検査法 |
研究概要 |
現在のところ、インプラント周囲炎のリスクを早期に探知する方法として、動揺度検査、いわゆる歯周病などに類似したポケット検査、レントゲン検査、咬合検査、細菌検査などが一般に考えられる。プラットフォームスイッチングなどの新しいコンセプトが導入されはじめているため、あらゆる施設で同一基準のポケット深度の測定等を実施することは不可能である。また、繰り返し行うレントゲン検査には被爆という大きな短所がある。インプラント周囲炎に関連して、インプラント周囲からの浸出液中に含まれるバイオマーカーの変動を調べることは、患者に対して非侵襲性であり、また被爆のリスクは全くない。初年度は、九州大学動物実験倫理委員会で了承された"インプラント周囲炎をシミュレートするモデルラットの作製とその診断、予防、治療法の開発"の実験計画に従って、極小のインプラント体をラットに埋入し、インプラント周囲炎をシミュレートするモデル動物の作成を試みた。具体的には、実験用ラットの口蓋部に極小インプラント体 を埋入し、オッセオインテグレーションの獲得まで維持管理、そして継続的観察を行った。 次に、オッセオインテグレーションが獲得されたラットのインプラント体周囲にPorpyhyromonas gingivalis由来のリポ多糖 (以下Pg-LPS) を添加した。これによって、インプラント周囲炎を作為的に誘導した。周囲にLPSを添加しないインプラント体をコントロール群とした 。誘導後、継続的にインプラント周囲を観察した。これらの手順による方法でインプラント周囲炎をシミュレートするモデル動物作製が可能かどうかをRNAレベルで検証した。インプラント周囲炎の誘導を確認できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、インプラント周囲炎の誘導を組織学的解析によって行う計画をたてていたが、RNAレベルでの解析にとどまった。これは、動物への極小インプラント体の埋入予備実験が予定より時間を費やす結果となったことが原因と考えられる。しかしながらRNAレベルでの解析の結果を得ることが出来たことから、おおむね予定通りインプラント周囲炎のラット動物モデルの作成を達成したと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、被爆のない検査法の開発のために1年目に確立したインプラント周囲炎モデルラットを用いて、インプラント周囲からの浸出液の回収方法について検討する。回収効率がよく、また臨床に応用可能な簡易的、均質的、経済的な回収方法であるかという点に着目して検討する。候補となる方法としては、ペーパーポイントを利用する方法を考えている。具体的には、インプラント周囲歯肉溝からペーパーポイントを用いて単位時間あたりの浸出液を回収し、リン酸バッファー中で保存する方法である。2年間から、3年目にかけて、回収した浸出液中のバイオマーカーの解析を行う。ELISA法を用いて回収したインプラント体周囲の浸出液中に含まれる炎症、骨吸収に関連したタンパク質の濃度を測定する 。炎症のマーカーである各種インターロイキン、ケモカイン、マトリックスメタロプロテアーゼ、および骨吸収に深く関連したRANKL、OPG分子等をバイオマーカーの候補分子とし解析する。また、初年度に得られたデータを基に、インプラント周囲炎の進行度をレントゲンおよび組織学的に分類する。 2年間で得られた結果を取りまとめ、成果の発表を関連学会で行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
自己点検で述べたように、当初、インプラント周囲炎の誘導を組織学的解析によって行う計画をたてていたがRNAレベルでの解析にとどまった。これは、動物への極小インプラント体の埋入予備実験が予定より時間を費やす結果となったことが原因と考えられる。したがって、組織学的な解析のための経費を執行するまでには至らず平成25年度への繰り越しとなった。平成25年度に、実験補助者等を増員し動物実験の回数を増やし初年度に行えなかった組織学的な解析を行い、また当初予定していた浸出液中のバイオマーカーの解析も平成25年度の経費で予定通り行うこととする。
|