研究課題/領域番号 |
23659922
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
野口 和行 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (90218298)
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研究分担者 |
迫田 賢二 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (70419654)
山下 大輔 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 医員 (80550053)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | インプラント / 歯周組織 |
研究概要 |
本研究は、iPS細胞を利用した「歯周組織を有する歯周組織再生型インプラント療法」の開発を目的としている。歯周組織における付着器官とは、セメント質-歯根膜-歯槽骨の3つの器官の総称である。したがって、「歯周組織再生型インプラント」を開発する上でチタン表面上でのセメント質の形成は非常に重要な役割を担うと考えられる。我々はこれまでに、チタン表面上での骨芽細胞の増殖・分化を解析し、良好な結果を得ている。チタン表面に存在する酸素にカルシウムが結合し、さらにオステオカルシンやオステオポンチンが接着することで、骨芽細胞や骨基質自身がチタンに結合する。セメント芽細胞は骨芽細胞同様に細胞外基質を産生するため、チタン表面上では骨芽細胞と同様な接着様式であると考えられる。そこで、チタン表面上でのセメント芽細胞の増殖を検討してみた。その結果、セメント芽細胞はチタン表面上において骨芽細胞と同様に良好な増殖を示した。次に、iPS細胞からセメント芽細胞への分化誘導を行うために、iPS細胞とセメント芽細胞の共培養系を作製した。条件を変えながらiPS細胞からセメント芽細胞への分化を試みたが、現時点においてはin vitroの系で分化誘導することは困難であることが分かった。そこで、歯の発生期や歯周組織の再生において重要な役割を担っている間葉系幹細胞に着目し、まずはiPS細胞を間葉系幹細胞へ分化させることとした。iPS細胞から分化させた間葉系幹細胞の分化能を確認するために脂肪分化刺激と骨分化刺激を加えた。脂肪分化をOil Red O染色で確認したところ、Oil Red O染色陽性の脂肪細胞分化が確認された。また、骨分化を骨分化のマスター遺伝子であるCbfa1をリアルタイムPCR法で確認したところ、時間依存的(1~10日)にCbfa1の発現が上昇していることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的の1つであるin vitroの系での、iPS細胞からセメント芽細胞への分化誘導には至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
現時点では、in vitroの系におけるiPS細胞からセメント芽細胞への分化誘導は困難であることが分かったため、研究計画に若干の変更を加え、iPS細胞を間葉系幹細胞へ分化させることとした。 歯根の発生期には、ヘルトヴィッヒ上皮鞘を構成するエナメル上皮が幼若な象牙質上にエナメルマトリックスタンパクを分泌し、そこにMSCが誘導されてセメント芽細胞や線維芽細胞に分化する。ルートプレーニング後の根面にエナメルマトリックスタンパクを塗布するとセメント質を含めた歯周組織の再生が起こるはずであり、これが現在臨床で頻用されているエムドゲイン(R)の基本コンセプトである。すなわち、チタン表面をエナメルマトリックスタンパクでコーティングし、そこへiPS細胞由来間葉系幹細胞をシート状にして覆うことでセメント質-歯根膜-歯槽骨の付着器官を有したインプラントが期待される。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度は、上述したように研究の進展が予想通りとはいかず、研究費に未使用額が生じた。しかしながら、研究計画に若干の変更を加えたことで本研究は順調に進み出している。平成24年度は、チタンインプラント体を免疫不全ラットへ移植埋入する予定である。インプラントはラットの顎骨へも埋入できるものを業者へ特注で作製依頼する(平成24年4月購入済み)。このインプラント1本の単価が¥10,000以上するため、実験器具(インプラント、マイクロサージェリー用器具、その他)で、¥1,000,000を計上する。免疫不全ラットを使用予定であるため、実験動物には¥700,000を計上する。組織切片はチタンを含んだ特殊な切片となるため、組織切片作製費として¥500,000を計上する。残りを、生化学試薬や抗体の費用として計上する。
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