研究課題/領域番号 |
23659924
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
宮崎 隆 昭和大学, 歯学部, 教授 (40175617)
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研究分担者 |
柴田 陽 昭和大学, 歯学部, 助教 (30327936)
田中 玲奈 昭和大学, 歯学部, 助教 (80585779)
有本 隆文 昭和大学, 歯学部, 講師 (60407393)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | エナメル / 再生 / エナメルタンパク |
研究概要 |
歯に齲窩が形成される前の段階で予防をする日常のケアと,適切な初期齲蝕の治療には国民から重大な関心が寄せられている.一般臨床で齲蝕の治療法は,その大小に関わらず患部を機械的に切削する.特に金属修復では,歯質の予防拡大や便宜拡大による切削量が多く,患者に大きな苦痛を与えている.また,修復材料の磨耗や腐食による金属イオンの溶出がアレルギーどの原因になることがある.コンポジットレジン修復は金属修復にくらべて切削量が少なく,色調が歯に近いことから審美的な回復が見込める.しかし,物理的性質が金属や天然歯より低いことから経年的に劣化し,変色や二次齲蝕などの問題が生じる.人工材料を用いることによるデメリットや治療コストなどの観点から,齲蝕をエナメル質初期齲蝕のステージで進行を抑制し,天然歯質を再生させることはきわめて重要な処置であると言える.遺伝子組み換え技術で合成したエナメルタンパクと人工体液をエナメル質初期齲蝕に作用させることにより,生理的条件下で非侵襲的にエナメル質を再生させる治療方法を検討した.遺伝子組み換え技術により,増殖の速い大腸菌に遺伝子情報を組み込んで特定のタンパクを発現・回収することが可能になった.このため,生体内にわずかしか存在しないタンパクの解析や生体反応を分析することが可能になり,歯科の研究分野でもエナメル質のマイナープロテインの役割が徐々に明らかにされている.一連の研究から,エナメル形成期の主要タンパクであるアメロジェニンが,エナメル質の小柱構造やナノアパタイト結晶成長方向に重要な役割を示すことが明らかとなった.またMMP20などのプロテアーゼが,エナメル小柱に残留しているエナメルタンパクを分解すると同時にナノアパタイト結晶がさらに成長することで,エナメル小柱構造をさらに誘導することが判明した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験計画の修正があったものの,大腸菌の遺伝子組み換えによって回収した豚フルレングスアメロジェニン(rP172)および豚MMP20(rpMMP20)を人工体液中で抜去歯のエナメル質表面に作用させ,人工エナメル質を合成する目処がたった.
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今後の研究の推進方策 |
エナメルタンパクやプロテアーゼ濃度,ミネラル供給源である人工体液組成を変化させ,構造の異なる人工エナメル質を化学的・物理的に検証することにより,これまで天然歯の解析では不十分であった生体材料としてエナメル質の特性を明らかにできる.
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次年度の研究費の使用計画 |
エナメル質の再生に利用する人工体液作成のため,各種の試薬を購入する.微小領域の機械的特性を分析するナノインデンテーション法については,測定用ダイヤモンドチップが高額な消耗品である.本実験から得られるデータは学術的にも価値の非常に高いものであり,国際学会発表や国際学術誌などの投稿が必要であると考えられるため,旅費等も算出する必要がある.
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