研究課題/領域番号 |
23659925
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研究機関 | 東京歯科大学 |
研究代表者 |
吉成 正雄 東京歯科大学, 歯学部, 教授 (10085839)
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研究分担者 |
松永 智 東京歯科大学, 歯学部, 講師 (70453751)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 顎骨 / 生体アパタイト / 結晶配向性 / 力学的特性 / 骨密度 / インプラント |
研究概要 |
顎骨の力学的特性はインプラント治療の正否を決める重要な因子である。顎骨の力学的特性は、骨密度(BMD)のみではなく、生体アパタイト(BAp)結晶配向性に大きく依存することが報告されているが、顎骨のBAp 結晶配向性と力学的特性の具体的な関係に言及した研究は少なく、ましてやヒト顎骨を使用した研究は皆無である。そこで、ヒト下顎骨のBMD値とBAp結晶配向性の関係を調査するとともに、動物を使用した片咀嚼モデル、およびインプラント埋入モデルにおいてBAp 結晶配向性と力学的特性の関係を調査することを目的とした。これらが明らかになれば、骨生検手法による骨質診断、骨増生法のガイドライン策定へ寄与するだけでなく、メカニカルストレスのメカニズムの解明に繋がる可能性を有している。 ヒト下顎骨(有歯顎)における皮質骨および海綿骨のBMD値とBAp結晶配向性の計測により、歯槽部と下顎底部ではBMD値に差がないがBAp結晶配向性に大きな違いがあり、下顎底部では近遠心的に配向しているのに対し、歯槽部では歯の植立方向に強い配向性が認められることが明らかとなった。 また、顎骨のBAp結晶配向性と弾性係数などの力学的性質は相関性があることが立証された。これは、ヒト下顎骨が、咬合圧に応答する歯槽部と長管骨構造を有する下顎底部といった有歯顎に特徴的な二重構造を反映している結果と考えられ、咬合圧が顎骨の力学的特性に影響していることを示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト下顎骨(有歯顎)における皮質骨および海綿骨のBMD値とBAp結晶配向性の計測により、歯槽部と下顎底部ではBMD値に差がないがBAp結晶配向性に大きな違いがあり、下顎底部では近遠心的に配向しているのに対し、歯槽部では歯の植立方向に強い配向性が認められることが明らかとなった。しかし、咬合の有無、および下顎および上顎の結晶配向性については十分に検討されていない。 また、顎骨のBAp結晶配向性と弾性係数などの力学的性質は相関性があることが立証されたが、歯槽部や下顎底部など、部位における両者の関係は十分に解明されていない。 さらに、実験的片咀嚼による咬合力の除去が下顎骨構造に及ぼす影響に関しては、咬合力の除去の時期などに対してなど、さらなる検討が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト顎骨の力学的特性とBAp結晶配向性との関係については、メカニカルストレスの有無、および下顎および上顎の結晶配向性を精査する。また、動物を使用した片咀嚼モデル、およびインプラント埋入モデルにおいて、顎骨のBAp結晶配向性と力学的性質の関係を検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.ヒト顎骨のBAp 結晶配向性1)有歯顎における臼歯部と前歯部の違いについて、前年度と同様に検討する。2)無歯顎と有歯顎の違いについて、前年度と同様に検討する。2.動物の顎骨を使用した研究1)実験的片咀嚼モデルによる顎骨の特性評価:家兎およびビーグル犬の上下顎左側臼歯を歯頚部まで切断して飼育し、咀嚼群(右側)、非咀嚼群(左側)顎骨に分ける。また、前年度と同様な手法によりBAp 結晶配向性・力学的特性・コラーゲン走行方向を測定し、それらの関係を精査する。さらに、咬合の有無が下顎骨の骨吸収および力学的特性に及ぼす影響について検討する。2)インプラント埋入モデルによる顎骨の特性評価・ISO/TS22911 Dentistry-Preclinical evaluation of dental implant systems-Animal test methods(申請者が企画案作りに参画)に基づいて、インプラント埋入による動物試験を行う。インプラント埋入群(埋入後に咬合圧負荷開始時期を変化させる)と、インプラント非埋入群(コントロール)に分ける。顎骨を採取し、前年度と同様な手法によりBAp 結晶配向性・力学的特性・コラーゲン走行方向を測定し、それらの関係を精査することにより、インプラント埋入と咬合圧開始時期が顎骨の力学的特性に与える影響を検討する。
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