金属アレルギーのアレルゲンは、金属イオンが生体内に入りタンパク質と結合したものである。しかしそのアレルゲンの同定は、未だ行われていない。そこで本研究は、アレルゲンとなる生体内タンパク質と結合する金属イオンの組み合わせの解明のために、ディスク部分を測定金属とした回転リングディスク電極(RRDE)による対流ボルタンメトリーを応用した。得られた酸化-還元曲線から生体内での反応を解析した。 本年度、ようやくディスク交換型RRDEが回転電極装置のメーカーにて完成し、購入することができたため研究計画を順次遂行した。前年度に検討済みの測定条件(RRDEの補足率、電解質溶液の容量、電解セルの保持温度、RRDEの回転速度、RRDEの電位走査範囲、走査速度、走査回数)にて、タンパク質の最小構成単位であるアミノ酸6種類と純金属13種類について対流ボルタンメトリーを行った。その結果、ある種のアミノ酸と特異的に反応する純金属が在ることがわかった。測定を繰り返し、特異的反応を示すアミノ酸と純金属の組み合わせを解明した。それら組み合わせについてリング部分をグラッシーカーボンとしたRRDEにて対流ボルタンメトリー行い、リング電極で捕えた化学種を検討した結果、アミノ酸と反応する純金属の価数には共通点の在ることがわかった。 タンパク質を構成するアミノ酸の種類はさらに14種類あり、それらについても今回と同様の測定を行い、検討をする必要がある。しかし、それらアミノ酸は水溶液中で酸性あるいは塩基性領域で安定のため、金属を用いたボルタンメトリーには液性が大きな影響を及ぼしてしまうことが予想される。今後の課題としては、それら電解質溶液中での測定のための工夫をすることである。 以上、本研究の結果から金属アレルギーのアレルゲン解析にRRDEを用いた対流ボルタンメトリーの応用は十分有用であると、結論することができる。
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