研究概要 |
microRNAは, 細胞増殖や分化, アポトーシスなど生体内のさまざまな現象に関わっており, がんにおいては, これまでにも数多くの発現異常が報告されている. microRNAは, 標的遺伝子のmRNAの翻訳を抑制することで, 発生や分化の調節に関わっているとされ, その発現異常が, がんの発生に関与していることが明らかにされている. 今回, 口腔がん患者の血液および唾液からmicroRNAを抽出し, 口腔がんのバイオマーカーとなり得るものを検索し, より低侵襲性な, がんの早期診断法の開発を目指して研究を遂行した. 本年度は, 昨年度の口腔がん由来細胞株を用いた実験系に加え, 口腔がん患者と健常者の組織および血液, 唾液を用いて, その中に含まれるmicroRNAの発現を調べた. 細胞からのmicroRNAの抽出方法とは異なり, 血液・唾液などの液性中に含まれるmicroRNAに対しては, 特殊な装置を用いて, 抽出精度の向上を図った. 抽出されたmicroRNAを含むtotal RNAからmatureなmicroRNAのみを逆転写し, ヒトの様々ながんにおいて発現変動が報告されている約100種のmicroRNAについて, 比較検討した. その結果, 口腔がん由来細胞株および口腔がん組織において, let-7 familyは共通して発現減弱していることが確認された. また, 口腔がん組織での発現の特徴と, 血清および唾液中での発現の特徴には関連性がみられ, 共通して発現変化を示すmicroRNAも認められた. 細胞内に存在するmicroRNAと液性中の遊離microRNAは, その存在状態が異なっているため, 血清および唾液中のmicroRNAの発現と臨床病態との関連性についてはさらなる検討が必要と思われる.
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