我々は以前よりシスプラチン(CDDP)感受性細胞株(親株)とそれから樹立したCDDP耐性株を用いてCDDP感受性・耐性のメカニズムを研究してきた。 これまで、耐性株(H-1R、KBR、Sa-3R)と親株(H-1、KB、Sa-3)を用いたマイクロアレイ解析から耐性株において上昇していたアルドケトース還元酵素であるAKR1Cファミリーに注目した。CDDPは細胞質内で加水分解を受け酸化型CDDPになり核内でDNAに結合することでDNA合成および癌細胞の分裂を阻害し抗腫瘍効果を発揮する。AKR1Cはこの酸化型CDDPの活性化水分子を還元することでCDDP耐性に関わるのではないかと考えた。 RT-PCRで確認したAKR1C遺伝子の発現はマイクロアレイ解析結果と一致しておりAKR1C発現亢進とCDDP耐性の相関が示唆されたため、耐性株のAKR1CファミリーをそれぞれノックダウンしMTSアッセイを行った結果、耐性株の薬剤感受性が亢進したことからAKR1CがCDDP耐性に関わることが確認された。また文献よりNSAIDsがAKR1Cの活性サイトに結合することでその活性を阻害する事がわかった。特にメフェナム酸で強い阻害効果が報告されていたためメフェナム酸とCDDPとの併用効果を調べた。耐性株にCDDPとメフェナム酸を併用したところ細胞増殖抑制を認めたため、in vitroにおいてメフェナム酸を使うことでCDDP感受性の亢進を認め、in vivoにおいてCDDPとメフェナム酸の併用効果を確認した。メフェナム酸とCDDP併用群は明らかにCDDP感受性が上昇していた。様々な抗がん剤とメフェナム酸の併用実験と毒性試験を in vitro、およびin vivoで行った。結果より、AKR1Cファミリー遺伝子がCDDP耐性に関わり、阻害剤であるメフェナム酸とCDDPとの併用療法が有用であることが示唆された。
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