研究課題/領域番号 |
23659938
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
星 和人 東京大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (30344451)
|
研究分担者 |
高戸 毅 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (90171454)
森 良之 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (70251296)
藤原 夕子 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (50466744)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | 再生医療 / 間葉系幹細胞 / DNAメチル化 |
研究概要 |
口腔外科領域の骨再生医療では骨髄由来間葉系幹細胞(MSC)が多用される。再生医療には細胞培養は不可欠であるが、MSC を培養すると骨分化能は極端に低下する。申請者らはこの「細胞劣化」の原因を、細胞培養にともなうDNA の過剰なメチル化によるものと考える。本研究の目的は、培養MSC におけるDNA メチル化をゲノムワイドで解析し、細胞劣化に伴うメチル化部位を同定し、さらに、同部位に対する特異的な脱メチル化(リプログラミング)を実現することにより、再生医療の現実的なニーズに適う、必要最低限なリプログラミング方法を確立することである。上記を達成するため、平成23年度は以下の研究を行った。(1)組織・細胞の採取・調整:ラット骨髄液を採取し、単核細胞層を回収してポリスチレン製培養皿(直径10 cm)に播種した。DNA メチル化解析には、初代培養細胞(P1)、第3 継代培養細胞(P3)を用いる。(2)メチル化DNA 免疫沈降(MeDIP)法による解析DNA の調整:採取した組織・細胞からゲノムDNA を抽出する。ゲノムDNA を制限酵素Mse I で反応させて、CpG サイトを有するDNA フラグメントを多数調製した後、モノクローナルマウス抗5-メチルシチジン抗体を加え免疫沈降を行った。(3)ゲノムワイドのメチル化プロモーターDNA のプロファイリング:ラットMSC においてゲノムワイドの解析を行った(P1 細胞n=6、P3 細胞n=6)。全ゲノムのプロモーター領域およびその周辺領域(DNA メチル化の頻度が高いとされるCpG island shoreを含む、全転写開始位置の上流約7Kbp、下流約3Kb の領域)を網羅したプロモーター・マイクロアレイ(約200 万プローブ搭載、Roche 社製)によって検出した。データは現在解析中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
顎顔面がおもに治療対象となる口腔外科の骨再生医療においては、MSCが使用されることが多い。このMSCを再生医療で活用するためには細胞培養を実施する必要がある。しかし、MSC を培養すると骨分化能は極端に低下する。申請者らはこの分化能の低下原因を、細胞培養にともなうDNA の過剰なメチル化によるものと考える。本研究の目的は、培養MSC におけるDNA メチル化をゲノムワイドで解析し、細胞劣化に伴うメチル化部位を同定し、さらに、同部位に対する特異的な脱メチル化(リプログラミング)を実現することにより、再生医療の現実的なニーズに適う、必要最低限なリプログラミング方法を確立することである。上記を実現するため、平成23年度は、組織・細胞の採取・調整ならびに、メチル化DNA 免疫沈降(MeDIP)法による解析DNA の調整、ゲノムワイドのメチル化プロモーターDNA のプロファイリングを実施した。これらの研究は年次計画通りに進展した。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度は計画の最終年度であり、(1)培養に伴う細胞劣化によるDNA メチル化変動部位の同定(2)メチル化制御による培養細胞劣化の抑制(3)ミニマム・リプログラミングMSC のラット骨再生モデルでの検証を実施する。口腔外科領域において臨床上の要請が高い骨再生医療技術を、より安全で確実なものとして提供することを目的として、平成23年度は、培養MSCのプロモーターのDNAメチル化をゲノムワイドで解析した。これらをもとに、細胞劣化にともなうメチル化変動部位を検索し、これまでiPS細胞樹立に使われたリプログラミング因子や、既知のDNA脱メチル化薬剤を単独あるいは組み合わせて、この部位のメチル化状態を特異的に改善するミニマム・リプログラミングの技術を確立し、ラット骨再生モデルで検証することにより、本研究の目標を達成する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
(1)培養に伴う細胞劣化によるDNA メチル化変動部位の同定:第一のスクリーニングとして、ゲノムワイドの全プロモーター領域におけるDNA メチル化密度を評価し、メチル化密度が変化したプロモーター領域を選定する。さらにプロモーター内でのメチル化部位の局在性、遺伝子配列におけるCpG コンテントの密度、遺伝子の相対発現などを詳細に評価し、培養に伴う細胞劣化によるDNA メチル化変動部位を同定する。(2)メチル化制御による培養細胞劣化の抑制:リプログラミング因子(Oct3/4, Sox2, Klf4, c-Myc) やDNA メチル化酵素(DNMT1, 3a, 3b)の複合あるいは単独導入、またはDNA メチル化剤あるいはDNA 脱メチル化剤の添加などにより、上記の細胞劣化によるDNA メチル化の変化を解析する。すなわち、培養MSCに上記因子・薬剤を単独あるいは組み合わせで投与し、(1)項で選定した部位のDNA メチル化状態を評価して、必要最小限のリプログラミングを得る。上記のミニマル・リプログラミングを施したMSC に対して、骨分化能を評価する。(3)ミニマム・リプログラミングMSC のラット骨再生モデルでの検証:前項で検討したミニマム・リプログラミング細胞の骨再生医療への有用性・実用性を検証する。ミニマム・リプログラミング刺激を加えたヒトMSCをヒドロキシアパタイト多孔体に浸透させる。37℃、4時間反応させたのち、ヌードラットの背部に移植する。移植後に移植片を回収し、組織学的および生化学的を検討する。
|