研究課題
口腔扁平上皮癌の浸潤と転移を再現できる正所性移植モデルを用いて、線維芽細胞増殖抑制剤(トラニラスト)と血管新生阻害剤(アバスチン)の腫瘍間質を抑制し、腫瘍増殖や浸潤・転移に対する効果を検討した。高浸潤性のヒト口腔扁平上皮癌細胞株のOLC-01細胞(浸潤様式4D型)をヌードマウスの口底もしくは舌に移植した後に、薬剤を投与した。その結果、移植腫瘍の大きさの平均はコントロール群とトラニラスト投与群、アバスチン投与群では差が認められなかった。リンパ節転移に関しても両群に差は認められなかった。病理組織像で移植腫瘍がトラニラストを投与することで浸潤様式4C型や3型にダウングレードする傾向は認められなかった。しかし、癌細胞の細胞増殖活性を観察するために増殖細胞核抗原PCNA抗体を、腫瘍組織の低酸素状態を観察するために低酸素誘導性因子HIF-1α抗体を用い免疫染色を行ったところトラニラスト投与群で陽性率が高かった。アバスチン投与群では血管とリンパ管をCD34抗体とD2-40抗体で2重染色した。その結果、血管・リンパ管の明らかな新生阻害効果は観察できなかった。また、トラニラストと抗癌剤(シスプラチン)を併用した群では用いたヌードマウスの約半数が実験期間中に死亡した。また、浸潤様式4D型を示すOLC-01細胞を使用したが、それぞれの単剤投与では効果がほとんど認められなかった。しかしながら、抗癌剤との併用群ではマウスの死亡例が認められたものの一定の効果が観察された。浸潤様式4D型の腫瘍ではαSMA陽性の線維芽細胞が多く認められ、腫瘍間質にはCancer Associeted fibroblast (CAF)が多く認められた。しかしながら、トラニラスト投与では線維芽細胞は減少したが、CAFには効果がないことが判明した。一方、シスプラチン投与では線維芽細胞の減少はしないがCAFには抑制効果を認めた。
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