研究課題/領域番号 |
23659945
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
林堂 安貴 広島大学, 病院(歯), 講師 (70243251)
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研究分担者 |
岡本 哲治 広島大学, 医歯薬保健学研究院, 教授 (00169153)
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キーワード | 口腔癌 / 細胞接着 / インテグリン / 浸潤 / 転移 |
研究概要 |
インテグリンはαとβのサブユニットで構成されているヘテロ二量体で,細胞膜上に発現し細胞の細胞外基質への接着や細胞遊走を制御していることが知られている.これまでに,インテグリンαvが活性型MMP-2の細胞膜上への結合因子として機能していることや,インテグリンαvがMAPキナーゼシグナル伝達系を介して口腔扁平上皮癌細胞の増殖を制御していることを明らかにした.さらにインテグリンαv介して,扁平上皮癌細胞は運動能が促進され,このシグナル伝達にはRhoファミリーG蛋白Rac1が関与していることをみいだした.これらの知見から,インテグリンαvを標的とした,口腔扁平上皮癌の分子標的治療は,扁平上皮癌の増殖と運動能を抑制する 可能性が示唆された. そこで,インテグリンαvのアンチセンスRNAを産生するプラスミドを作製し,これを扁平上皮癌細胞に導入し,インテグリンαv蛋白の発現抑制を試みた.インテグリンαvサブユニット蛋白発現が低下した扁平上皮癌細胞は,in vitroでの細胞増殖のみならず,コラーゲンゲルを用いたin vitro浸潤モデルにてその浸潤能が低下していることが確認された.さらに,ヌードマウスに移植されたインテグリンαvサブユニット蛋白発現が低下した扁平上皮癌細胞は,その造腫瘍能が著しく低下することがわかった.これらのことから,インテグリンαvサブユニット蛋白発現が口腔癌の浸潤能を抑制する可能性が示唆された
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請課題は,腫瘍細胞の細胞接着分子であるインテグリンαv発現を特異的に抑制することで,口腔癌の増殖や浸潤・転移を阻止する新しい口腔癌治療法を開発することを目的としている. これまでの研究で,インテグリンαvのアンチセンスcDNA導入により,扁平上皮癌細胞でのインテグリンαv発現を抑制できることもわかった.さらに,インテグリンαv発現抑制により,扁平上皮癌細胞のin vitro及びin vivoでの造腫瘍能や増殖能が低下することが確認され,本申請課題の目標である,口腔癌の増殖や浸潤・転移を阻止を目的としたインテグリンαv発現抑制による新しい口腔癌治療法開発につながる知見が得られたように思われる.
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今後の研究の推進方策 |
①アンチセンスcDNAまたはsiRNAによるin vitroでの癌細胞の増殖能阻止効果の検定 インテグリンαvに対するsiRNAを数種類,設計・作成する. インテグリンαvのアンチセンスRNAを産生するプラスミドともにこれらのsiRNAを,リポフェクタミン法で扁平上皮癌細胞に導入し,インテグリンαvのmRNA及び蛋白の発現抑制効果を,それぞれリアルタイムPCR及びWestern Blot法で解析する.さらにアンチセンスcDNAまたはsiRNA導入による細胞増殖抑制効果を.in vitro及びin vivoにて検討する.これとともに,アンチセンスcDNAまたはsiRNA導入が,扁平上皮癌細胞のMAPキナーゼシグナル伝達系に与える影響について解析する. ②アンチセンスcDNAまたはsiRNAによるin vitroでの癌細胞の浸潤阻止効果の検定 アンチセンスcDNA またはsiRNAが導入された扁平上皮癌細胞の浸潤能は,口腔癌細胞の遊走能と培養上清及び細胞蛋白中の蛋白分解活性を,それぞれBoyden chamber法とザイモグフィーで解析することで,癌細胞の浸潤阻止効果を判定する.さらに,アンチセンスcDNA またはsiRNAが導入された扁平上皮癌細胞をヌードマウスに移植して形成された腫瘍の増殖様式を組織学的に解析する.
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次年度の研究費の使用計画 |
上記の研究計画の推進のために,遺伝子工学関連試薬,抗体,培養液や培養器具等の消耗備品の購入を予定している.
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