研究課題
昨年度までにわれわれは、アポトーシス細胞の「Eat me signal」に関与しているMilk fat globule factor-E8(MFG-E8)が口腔扁平上皮癌における化学・放射線・免疫療法の効果予測因子となり得る可能性について検討を行い、抗癌剤(5-FU、CDDP)およびγ線により口腔扁平上皮癌(OSC)細胞にアポトーシスを誘導すると、OSC細胞におけるMFG-E8の発現ならびに分泌が促進され、LAK細胞に対する被障害性や単球・マクロファージに対する被貪食性が促進されることを報告した。そこで、本年度は口腔扁平上皮癌組織におけるMFG-E8の発現を免疫組織化学染色法にて調べ、化学放射線療法の治療効果、臨床病理学的因子や予後との関連について検討した。正常口腔粘膜および口腔扁平上皮癌におけるMFG-E8の発現を免疫組織学的に検討したところ、MFG-E8は正常口腔粘膜ではほとんど発現されていなかったのに対し、口腔扁平上皮癌組織では強い発現が認められた。さらに、その発現と腫瘍細胞の分裂度、異型度、浸潤様式、頸部リンパ節転移といった臨床病理学的因子との間に関連は認められなかったが、化学放射線治療奏功率との間に相関が認められた。これらとともに、治療前に比べ、化学放射線治療後のOSCにおいてMFG-E8の強い発現が認められた。以上のことから、口腔扁平上皮癌におけるMFG-E8の発現が抗癌剤およびγ線に対する感受性を調節している可能性が示唆された。