研究課題/領域番号 |
23659949
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中村 誠司 九州大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (60189040)
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研究分担者 |
林田 淳之介 九州大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (80432920)
森山 雅文 九州大学, 大学病院, 助教 (20452774)
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キーワード | シェーグレン症候群 / 唾液 / サイトカイン |
研究概要 |
本研究は、シェーグレン症候群(SS)患者45 例、薬物性口腔乾燥症患者14 例、放射線性口腔乾燥症患者8 例、健常者11例を対象とした。唾液採取用チューブ(サリソフト)を用い、口腔内より採取した唾液を遠心分離し、その上清を研究サンプルとした。唾液中サイトカイン濃度の測定は、50ulという少量で数十種類のタンパクを同時に測定することが可能であるCytometric Beads Array Flex Systemを用いた。さらに、ストレス関連物質であるSecretory IgA (SIgA)の濃度をELISA法(SALIMETRICS 社)を用いて測定した。その結果、SS患者は健常者と比較して、Th1タイプ(INF-γ、TNF-α、IL-2、IL-8)およびTh2タイプ(IL-5、IL-10)の濃度が有意に高かった。しかし、その他のドライマウスについては、健常者と比較していずれの分子においても有意差は認めなかった。また、SS患者をリンパ球の浸潤程度で重度・軽度の2群に分けて比較したところ、重度の症例では、IL-6、IL-17の有意な増加を認めた。SIgA濃度については、ドライマウス患者は健常者より平均濃度が高かったが、有意差は認めなかった。今回の結果から、ごく少量の唾液を用いて微量なタンパクを解析できることが明らかになった。今後は症例数を増やし、経時的に測定することにより、従来困難であったドライマウスの診断や病態把握に有用かを検討していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の研究成果の一部は、Clinical & Experimental Immunologyに掲載中であり、世界的にも注目されている。唾液を検体として用いた新しい検査方法の開発を目指していく中で、今年度の研究成果は期待通りのものと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は症例数を増やし、また検索項目(sIgAなど)も増やして検討を加え、ドライマウスの鑑別診断や病態の把握に有用なものを選択する。さらに、臨床所見との関連も考え、データ収集を行っていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
口腔関連の検査体系の確立: ドライマウスの鑑別診断や病態の把握に有用と思われるタンパクや唾液の種類を決定し、全てのタンパクを一度で測定できるようにビーズの蛍光強度を調整する。これにより、微量の唾液を用いて一度にフローサイトメトリーで測定することができ、簡便かつ迅速な新しい診断方法が確立できる。さらに、唾液分泌量測定、唾液腺造影、唾液腺シンチグラフィー、超音波検査などの従来の口腔関連の検査結果を組み合わせ、正診率、感度、特異性を検討して検査体系の確立を目指す。その際、可能な限り、簡便、非侵襲的、高感度、かつ再現性が高いことを重視し、必要最小限の検査方法を選別することとする。
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