研究課題
近年、ドライマウスに対する社会的関心の高まりとともに、的確な診断と治療が求められている。しかし現在のところ、シェーグレン症候群 (SS) 以外のドライマウスには明確な診断基準がないため、診断に苦慮することが多い。そこで本研究では、ドライマウス患者の臨床所見を検討し、また非侵襲性で簡便かつ繰り返し採取可能な唾液を用いたドライマウスの新しい診断方法に繋がるかを検討した。SS患者90例、神経性・薬物性ドライマウス(DND)患者22例、放射線性ドライマウス(RD)患者30例、健常者36例を対象とし、安静時唾液分泌量(UWS)、刺激時唾液分泌量 (SWS)、visual analog scale (VAS) による自覚症状を測定した。次に、フローサイトメトリー法にて唾液中サイトカイン濃度を、ELISA法にてストレス関連物質である分泌型IgA(SIgA)、クロモグラニンA(CgA)濃度を測定し、健常者と比較検討した。その結果、SSとRDはUWS、SWSともに基準値以下であり、DNDはUWSのみ基準値以下であった。VASによる口腔症状は、全ての患者群で健常者と比較して有意に高値であったが、眼症状はSSのみ有意に高値であった。サイトカイン濃度では、SSは健常者と比較して、Th1・Th2全ての分子で有意に高かったが、DNDはIL-10のみが有意に低く、RDは有意差を認めなかった。また、SSを口唇腺のリンパ球浸潤程度で軽度と重度の 2 群に分類し、サイトカイン濃度を比較した結果、Th1が軽度で、Th2が重度の症例で有意に高かった。SIgA濃度はいずれの患者群も健常者と有意な差は認めなかったが、CgA濃度はDNDで健常者と比較して有意に高かった。臨床所見、唾液中サイトカインおよびCgAの検索は、ドライマウスの診断に有用であることが示唆された。また、経時的な唾液中サイトカインの検索は、繰り返し行うことが困難な口唇腺生検に代わって、SSの病態進展の把握にも応用できる可能性が考えられた。
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Oral Diseases
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Journal of Oral and Maxillofacial Surgery, Medicine and Pathology