唾液腺の機能再生を実現するため、非吸収性材料であるチタン材料を用いた唾液腺再生を試みた。チタンを組織再生の足場とするため、直径50μmのファイバーに切り出し、これを不織布状に加工した。空隙率は87%とし、100μmから400μmの連結孔を有する形状とした。不織布状スキャホールドは直径20㎜、厚さ2㎜に成形し、12ウェルプレートを用いた細胞培養実験に使用した。チタンはそれのみでも高い生体親和性を有する材料ではあるが、この表面への細胞誘導能をさらに向上させるために、スキャホールド内部の3次元構造に全く影響を与えずにチタン表面をハイドロキシアパタイトにてコーティングした。 唾液腺組織はラットより採取し、顎下腺組織を周囲組織より剥離し、導管部を結紮後に採取した。採取した顎下腺組織よりコラゲナーゼ処理にて唾液腺細胞を採取後、上記のチタンファイバー不織布製スキャホールド上に播種した。4時間後、24時間後に生細胞数を計測したところ、ハイドロキシアパタイトコーティングを実施したチタンファイバー不織布製スキャホールド上に播種した群が、未処理群と比較して有意に高い生細胞数を示した。生細胞数は細胞播種後3日目、5日目、7日目まで増加したが、いずれの時期においてもハイドロキシアパタイトコーティングにおいて有意に多い生細胞数を認めた。形態観察を共焦点顕微鏡にて試みたが、3次元構造を有するため、明らかな腺構造を確認することはできなかった。また唾液腺由来細胞は上皮細胞および線維芽細胞があり、線維芽細胞の増殖が上皮細胞よりも早いため、顕微鏡での観察をより困難にしていたと思われた。本研究ではチタンファイバー不織布上への唾液腺細胞の接着は確認できたため、今後は腺組織への分化、形態形成の観察が必要である。
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