研究課題/領域番号 |
23659960
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
福本 恵美子 東北大学, 大学病院, 助教 (10264251)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | う蝕予防 / エナメル質 / マグネシウム |
研究概要 |
エナメル質は生体内で最も硬い組織であるが、齲蝕により破壊され、人工物による修復に頼らざるを得ない。フッ素を応用した齲蝕予防が行われているが、付加的な齲蝕予防を期待し、マグネシウムをターゲットとした予防法を考案した。マグネシウムは、カルシウム、リン酸に次ぐ、エナメル質の主要構成元素である。マグネシウムは、エナメル質内リン酸マグネシウムとして存在するが、齲蝕の原因菌の多くは、その機能維持のためにマグネシウムを必要とする。したがって、酸により破壊されたエナメル質は、マグネシウムの供給源となることが予想される。そこで、リン酸マグネシウム置換により、齲蝕細菌の代謝活性促進を生じないエナメル質強化法の開発を目的とした。 そこで、ヒトの第一小臼歯のエナメル質を用いた初期う蝕モデルにて、ストロンチウムおよびカルシウムを外部から供給することで、再石灰化行なわれるかどうかを検討した。具体的には、酸処理と再石灰化溶液への交互の浸漬により人工的な初期う蝕病変を作成し、その表面に様々なイオンを含有するコート材と、イオン放出を伴わないコート材の2種類をコートし、再石灰化過程に着いて検討を行った。その結果、ストロンチウムおよびカルシウムを含有しないコート材と比較して、ストロンチウムおよびカルシウムを含有するコート材は、再石灰化を亢進することを見いだした。また、ストロンチウム等を含有する歯面コート材は、ミュータンスなどの口腔細菌の増殖を著しく障害することを見いだした。これらの知見から、再石灰化亢進部分における取り込み元素の測定と、細菌抑制に関わるイオン分子の同定を行なっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
東日本大震災により、研究施設が使用できなくなり、10か月程度はサンプル調整を除いた、実験データ解析が困難であった。新しい研究機器の購入や修理により、本来の研究活動が可能となったため、これまでに作成した研究サンプルの解析を進める。
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今後の研究の推進方策 |
ヒトの永久歯(フッ素塗布されていないもの)を利用し、酸と再石灰化液によるサイクル処理により、表層下脱灰モデルを作成する。この表層化脱灰モデルを用い、再石灰化溶液に浸漬することで、その溶液中に存在する様々な元素が取り込まれる。この再石灰化溶液中にマグネシウムの含有-非含有の組み合わせとともに、塩化カルシウム、塩化ストロンチウム、塩化バリウムを5段階の濃度で添加することで、エナメル質表面に取り込まれた金属元素の定量を、SEM-EDXにて解析を行う。 震災の影響により、平成24年度に予定していた研究を先に進めることで、アルカリ土類金属リリースマトリックスを作成した。このストロンチウムリリースコート材を利用し、上記の初期う蝕の再石灰化を試み、耐酸性と取り込み元素の同定とエナメル質構造の解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
表層下脱灰モデルの作成とその再石灰化に伴うエナメル質表面の金属元素の取り込み定量を行うための、試薬、プラスティック・ガラス器具、歯の切片作成のための機器付属消耗品などの購入を行う。また、歯の切片作成や解析機器の借用のための旅費としても使用を予定している。
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