研究概要 |
リラキシンは子宮弛緩因子と呼ばれるペプチドホルモンであり子宮や胎盤等から妊娠末期に血中へ分泌され、恥骨結合を弛緩させて分娩を補助する。我々はマウス顎顔面頭蓋発生におけるリラキシン受容体遺伝子(Rxfp)発現様相について報告した。リラキシンは細胞外基質分泌を調節することが報告されているが、骨芽細胞に対する作用機序は不明である。本研究はリラキシンとその受容体の骨芽細胞表現型に対する作用を検討することを目的とした。タンパク質輸送担体としてナノサイズのリポソームを用いリラキシン結合型リポソームを作製した。MC3T3-E1細胞を分化誘導培地にて培養し対照群およびリラキシンリポソーム群(20 ng/ml)との間で以下の実験を行った。MTT法にて細胞増殖能を評価し、ALP活性の測定、半定量的PCRによる骨芽細胞分化因子遺伝子発現の検索、アリザリンレッド染色による石灰化能の解析を行った。ザイモグラフィーにてMMP活性を、VVG染色にてコラーゲン生成を評価した。Rxfp遺伝子機能抑制実験としてsiRNA発現ベクター恒常発現MC3T3-E1細胞株を樹立し(MC-siRxfp1, 2)その細胞表現型を評価した。リラキシン群は対照群と比較して細胞増殖能に有意な差は示さなかった一方、有意に高いALPおよびMMP活性、Runx2 mRNAの発現亢進、Opg mRNA発現抑制を示した。MC-siRxfp1, 2は対照群と比較して有意に高い細胞増殖能を示した。MC-siRxfp1リラキシン添加群ではMC-siRxfp2と比較して有意に高いALP活性、Erkリン酸化の亢進、MMP活性の低下、コラーゲン生成の抑制および石灰化能の亢進が認められた。以上のことから、Rxfp2は骨芽細胞分化と石灰化に重要な役割を担うことが示された。
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