研究課題/領域番号 |
23659975
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
北村 正博 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (10243247)
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研究分担者 |
柳田 学 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (80379081)
山下 元三 大阪大学, 歯学部附属病院, 助教 (90524984)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 受動喫煙 / エピジェネティクス / 歯科疾患感受性 |
研究概要 |
平成23年度は副流煙成分の歯科疾患感受性に対するエピジェネティック制御の可能性探索に用いる実験的歯周病モデルマウスの作製に着手した。マウス口腔内に歯周病原性細菌の一つであるPorphyromonas gingivalis(Pg菌)の各種菌株であるATCC33277、381、W50、2561、53977、W83から最も強力に宿主細胞内に侵入する線毛遺伝子をもつW83株を選択し、この菌株をC57BL/6マウスに投与し、歯周組織破壊を効率的に生じさせる感染方法(感染頻度、感染期間)を検討した。その結果、C57BL/6マウスに抗生物質含有飲料水を一週間投与したのち、3日間抗生物質非含有飲料水におきかえ、その後Pg菌W83株を3日毎に10回感染させることで、最も顕著にマウス歯槽骨の吸収が誘導されることがマイクロCT解析により明らかとなった。次に、この条件下でマウスにPgを感染させたのち、血清を回収して血清中の炎症性サイトカインの発現をELISA法にて検討したところ、Pg感染群は非感染群と比較して血清中のIL-6の発現が亢進していた。このことからPgの口腔感染により全身的な炎症状態が誘導されていることが示唆された。今回確立したPg誘導実験的歯周病モデルマウスでは、骨吸収は誘導されたものの病理組織学的検討を行ったところ、歯肉組織に炎症性細胞の顕著な浸潤を認めなかった。そのため、今後はこのマウス歯周病モデルを用いて、歯槽骨の骨吸収の程度を歯周炎進行の指標として研究を進めていくこととした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成23年度は実験的歯周病モデルマウスの確立を目指した。しかしながら、歯周病モデルマウスの作製は容易ではなく、モデルマウスにおいて歯槽骨の吸収は誘導されたもののヒト歯周病病変部の病態、とりわけ歯肉組織の炎症性細胞浸潤を完全に復元することは出来なかった。歯周病モデルマウスの作製に時間を費やしたため、研究課題の一つであるマウス胎児歯胚を副流煙成分存在下で器官培養したのち組織学的検索する件に関してはほとんど着手できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に作製手順を確立したPg誘導マウス歯周病モデルを用いて、マウスに副流煙成分を腹腔投与し、副流煙成分が歯槽骨吸収にどのような影響を及ぼすかを検討する。副流煙曝露マウスが、副流煙に曝露されていない対照群と比較して歯槽骨の重症化を示せば、疾患感受性を上昇させるエピジェネティクス制御が存在する可能性が考えられる。研究費申請時に、平成24年度研究計画として予定していたDNAのメチル化を検出する実験に関しては、現時点では副流煙曝露マウスにおける歯槽骨吸収の亢進を認めた段階で、副流煙曝露マウスの骨芽細胞、歯根膜細胞を採取してゲノムを抽出して試料として用いる予定にしている。また、マウス胎児歯胚を副流煙成分存在下で器官培養する実験系も条件検討中であり、平成24年度中に組織形態学的検索を進める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
試薬、標識抗体や培養用シャーレ等の購入に850千円、国内研究発表と打ち合わせ旅費として100千円、国外での研究発表旅費として300千円、論文別刷費用として50千円を計上している。
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