研究課題
前年度は、歯科疾患感受性に対する副流煙成分によるエピジェネティック制御の可能性を検討する実験的歯周病モデルマウスの作成を試み、マウスの口腔内に歯周病原性細菌の一つであるP. gingivalis W83株を感染させることにより、マウス歯槽骨吸収が顕著に誘導されることを確認した。しかしながら、前年度に試作したモデルマウスでは、歯槽骨吸収は生じるものの、歯周病の局所病変部に通常認められる歯周組織中の炎症性細胞浸潤をほとんど認めなかった。このため平成24年度は、ヒトの歯周病病変部により近い病態をマウス口腔内に再現するため、前年度に試作したマウス歯周病モデルの改良を最初に行った。その結果、マウス上顎臼歯を絹糸で結紮することにより、その一週間後に歯周組織に炎症性細胞浸潤を伴う歯槽骨吸収が誘導されることが明らかになったことから、このマウス臼歯結紮誘導性歯周組織破壊モデルを、本課題の実験的歯周病モデルと位置づけて以後の研究を行った。すなわち、臼歯結紮を行う3日前にタバコの煙において主要構成成分とされているニコチン、あるいはタバコの煙成分の濃縮物 (cigarette smoke condensate: CSC) をマウス腹腔投与し、臼歯結紮一週間後における歯周組織破壊をマイクロCTとHE染色にてX線的および病理学的に検討した。その結果、マイクロCTではニコチン投与群およびCSC 投与群の両群において、陰性対照のPBS投与群と比較して有意な歯槽骨吸収を認めた。しかしながら、HE染色では全群に炎症性細胞浸潤像は存在するものの各群間で大きな差異は認められなかった。現在、炎症細胞浸潤部における免疫担当細胞の局在について免疫組織化学的手法を用いて検討中である。そしてさらに、マウス臼歯結紮誘導性歯周組織破壊モデルで生じた炎症歯周組織からゲノムを抽出し、DNAメチル化の検出を今後行う予定である。
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