研究課題/領域番号 |
23659977
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
山本 直史 岡山大学, 大学病院, 講師 (50432662)
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研究分担者 |
山口 知子 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (90580267)
畑中 加珠 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (50362992)
高柴 正悟 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (50226768)
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キーワード | 細胞周期 / 細胞増殖・分化 / 歯周組織 |
研究概要 |
昨年度の研究から、Fucciマウスの歯周組織の脱灰パラフィン包埋標本の解析は、歯肉上皮の細胞周期の可視化に有用であることが分かった。 本年度は、歯周組織の全ての構成細胞の細胞周期の解析、および細胞機能分析に向けて、1、マウス胎児標本を用いた歯胚発生期の解析、2、凍結非脱灰標本を用いた間葉系組織の解析、3、in vitroにおける創傷治癒アッセイによる細胞増殖・遊走機能の解析を行い、以下の成果を得た。 1、胎生期13~16日のマウス歯胚組織の脱灰パラフィン包埋標本の解析の結果、ほぼ全ての組織構成細胞の細胞周期を緑~赤の蛍光色素標識で確認できた。 蕾状期から帽状期の歯堤の内エナメル上皮には緑色を示す増殖細胞が豊富である一方、星状網の上皮細胞の大部分は赤色を示すG1期の細胞であった。 2、Fucciマウス(10週齢)の歯周組織の凍結非脱灰標本の解析の結果、上皮組織では細胞周期マーカーの発現が顕著である一方、間葉系組織では殆ど認められなかった。 3、Fucciマウス(3~4週齢)の歯肉組織から分離した歯肉上皮細胞を用いた創傷治癒アッセイの結果、スクラッチ部への細胞遊走と共に細胞周期マーカーの発現を認めた。さらにトランスフォーミング増殖因子β1存在下においては、赤色を示すG1期アレストの傾向が確認できた。 以上の結果から、Fucciマウスは創傷治癒の細胞周期解析に有用であることが示唆されたものの、間葉系組織における検出感度向上の必要があることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1、Fucciダブルトランスジェニックマウスを維持するためのFucci-S/G2/M-Greenマウス、およびFucci-G1-Redマウスの交配が、冬期に順調に進まなかったため。 2、間葉系組織における細胞周期マーカー検出のため、胎児および成熟マウスを用いた脱灰パラフィン包埋標本、および凍結非脱灰標本の作製の条件設定に時間を費やしたため。
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今後の研究の推進方策 |
間葉系組織における細胞周期マーカーの発現が極端に少なく、これは成熟マウスにおけるCAGプロモーターの発現効率が何らかの影響を及ぼしている可能性がある。 今後、脱灰パラフィン包埋標本、および凍結非脱灰標本作製の条件をさらに改変することによって、歯周組織の全ての構成細胞の細胞周期を解析できる条件を確立する予定である。 また、さらに感度の高い検出系を備えたFucci2マウス(Abe et al, Development, 2013)の入手も検討する。これらの対応策によって、交付申請書に記載した研究実施計画内容が円滑に進行すると考える。
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次年度の研究費の使用計画 |
まず、上記対応策によって、成熟マウス歯周組織の上皮および間葉系全ての構成細胞の細胞周期を解析できる組織切片作製方法を確立する。 その後、交付申請書に記載した以下の研究実施計画に沿って研究を進める。 ①歯周組織の恒常時における細胞周期の解析:正常歯周組織構成細胞の細胞周期の分布を解析する。 特に,G1→S期(黄色)の増殖細胞が集積する部位に焦点を絞り,二重蛍光免疫染色法によって,幹細胞マーカーOct-4,SSEA-4、およびSTRO-1の発現分布を解析し,細胞の未分化度と細胞周期の関連を調べる。 ②歯周組織の慢性炎症における細胞周期の解析:絹糸結紮歯周病モデルの作製は,申請者の研究室で既に行われている方法(投稿準備中)に準じて行う。 経時的に歯周組織切片を作製し,歯周組織構成細胞の細胞周期マーカーの発現パターン、幹細胞マーカーの分布,さらに,G1→G0期の増殖停止細胞に着目して,硬組織分化マーカー(Runx2,osterix,osteocalcin)の分布との関連を調べる。 ③歯周組織の細胞周期アトラスの作製
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