平成23年度に培養骨髄細胞を用いて骨芽細胞への分化および石灰化に対する模擬無重力環境の影響,模擬無重力環境で歯周病原性因子添加による影響を調べ,さらに平成24年度は株化骨芽細胞のMC3T3-E1細胞を用いて同様の検討を行った。すなわちP. gingivalis由来リポ多糖(P-LPS)を培地に50-1000μg/mlの濃度で添加して,無重力群,無重力・P-LPS添加群,重力付与対照群,重力付与・P-LPS添加群の4群を設定し,アルカリフォスファターゼ(ALP)活性を測定した。模擬無重力は昨年度同様,3D-Clinorotatorにより付与した。その結果,重力付与対照群と比較して,無重力群ではALP活性が上昇した。これらはP-LPS濃度依存的に減少し,いずれの濃度においても模擬無重力環境の方が酵素活性は高かった。この結果は培養骨髄細胞の場合と同様の結果であった。 次にラット大腿骨由来の培養骨髄細胞を用いて,模擬無重力環境および模擬無重力環境でP-LPS添加により影響を受ける遺伝子を網羅的に調べた。培養および模擬無重力付与は上記と同じ条件で行い,P-LPSは500μg/mlの濃度で添加した。培養終了後、細胞から総RNAを抽出しcDNAを合成し,DNAマイクロアレイにより遺伝子の変動を解析した。その結果,骨代謝マーカーでは,P-LPS添加,非添加ともに重力付与群と無重力群の間で2倍以上発現が変動した遺伝子は認められなかった。しかしP-LPS添加,非添加ともに模擬無重力の付与によりアポトーシスに関与するカスパーゼ12の遺伝子発現が約2倍上昇した。小胞体ストレスが過大になるとカスパーゼ12が活性化することが知られていることから,骨芽細胞の無重力環境での小胞体ストレス増加が示唆された。また,重力や荷重による刺激を受けると発現するペリオスチンが模擬無重力の付与により抑制された。
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