研究課題/領域番号 |
23659984
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
永田 英樹 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (50260641)
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研究分担者 |
田中 宗雄 大阪大学, 歯学部附属病院, 講師 (90263300)
小島 美樹 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (20263303)
前田 和彦 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (00346165)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 歯周病細菌 / 口腔常在菌 / 病原因子 |
研究概要 |
歯周病細菌が口腔内に定着し、病原性を発揮するためには、口腔常在菌との相互作用が重要な役割を果たしている。我々は、これまでに、有力な歯周病細菌の一つであるPorphyromonas gingivalisは線毛を介して種々の口腔レンサ球菌菌体表層に存在するglyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase (GAPDH)と結合することによりバイオフィルムを形成することを明らかにした。本研究では、まず、P. gingivalisと口腔レンサ球菌とのバイオフィルム形成に影響を及ぼす菌体表層成分を探索した。その結果、P. gingivalis菌体表層に存在するTonB-dependent receptor protein (RagA4)やmalate dehydrogenase (MDH)などいくつかの成分が同定された。そこで同定したタンパク質のアミノ酸配列を基にリコンビナントタンパク質を作製し、P. gingivalisと口腔レンサ球菌とのバイオフィルム形成に及ぼす影響を調べたところ、RagA4はバイオフィルム形成を促進し、MDHは逆に抑制することが明らかとなった。また、Streptococcus oralisのリコンビナントGAPDHを添加した培地でP. gingivalisを培養すると、RagA4やMDHの遺伝子発現が影響を受けることがわかった。さらに、RagA4やMDHを添加した培地でP. gingivalisを培養すると、P. gingivalisのluxSの発現量に影響を及ぼすことも明らかとなった。以上の結果より、本研究は、P. gingivalisのバイオフィルム形成において新たな知見を加えるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、口腔常在菌と歯周病細菌の相互作用について、歯周病細菌の増殖やバイオフィルム形成に影響を及ぼす成分を同定することである。上記のように、有力な歯周病細菌の一つであるP. gingivalisのバイオフィルム形成に及ぼす成分を探索したところ、rag4、MDH、NAD-dependent glutamate dehydrogenase (GDH)などがバイオフィルム形成に影響を及ぼすことがわかった。また、同定した成分には、バイオフィルム形成を抑制するものだけではなく、促進するものも含まれていた。さらに、これらの成分はお互いに発現を調整している可能性が示された。以上のことから、本研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、今年度に同定した菌体表層成分の働きをさらに詳しく検討したい。今年度はバイオフィルム形成に及ぼす影響を主に検討したが、次年度は、歯周病細菌の病原因子に及ぼす影響などについても検討したい。さらに、口腔レンサ球菌以外の口腔常在菌の働きについても検討したい。以上のことを明らかにすることにより、歯周病細菌の定着に及ぼす口腔常在菌の働きを解明し、将来的には、歯周病細菌の定着阻害剤の開発へと研究を発展させたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費は、主に、さらに研究を推進するための試薬や器具の購入費、研究成果を社会に発信するために、国内外の学会に参加し発表するための費用、また、研究成果を論文にするために必要な経費に使用したいと考えている。次年度に使用する予定の研究費はない。また、研究計画の変更や研究を遂行する上での課題もない。
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