研究課題/領域番号 |
23659991
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研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
羽村 章 日本歯科大学, 生命歯学部, 教授 (60162921)
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研究分担者 |
菊谷 武 日本歯科大学, 生命歯学部, 教授 (20214744)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 歯学 / 社会系歯学 / 老年歯科学 |
研究概要 |
【目的】健常者を対象に先行期の食物認知が脳活性に及ぼす影響を、fNIRSを用いて測定する。【対象と方法】精神・神経疾患の既往を持たない健常成人6名(平均年齢31.5±7.3歳)を対象として行った。測定にはスペクトラテック社製OEG-16を用い、被験者6名全員の前額部にバンドを装着し、安静時及び3つの条件で脳血流の測定を行った(計16チャンネル)。条件1では、被験者は開眼した状態で、介助者が声かけを行いながらゼリーを摂取させた。条件2では、被験者は閉眼した状態で、介助者は条件1と同様の声かけを行い、ゼリーを摂取させた。条件3では、被験者は条件2と同様に閉眼し、介助者は声かけを行わずに、スプーンを被験者の下唇に触れさせることで開口・ゼリーを摂取させる合図とした。【結果】安静時とすべての条件においてチャンネル間の脳血流量の相対的な増加量を比較したところ、前額部の左右において有意な差は認められなかった。条件1、2、3において、それぞれを安静時と比較したとき16チャンネル中15チャンネルで脳血流量の増加が有意に認められた(p<0.05)。条件1、2で比較を行ったところ有意な差は見られず、左右差も認められなかった。条件2、3での脳血流の増加を比較したところ、16チャンネル中13チャンネルで有意な増加を認めた(p<0.05)。その中でもチャンネル1において7.83倍の増加であった。【考察】本研究では先行期において視覚での認知と声かけによって、食物への準備が行われ、それに伴い脳もより活性化すると仮定した。視覚から情報の有無による有意な差異はこの研究において観察することはできなかったものの、声かけによって脳活性は向上することが明らかとなった。これは、介助者の適切な声かけが、被介助者の脳を活性化させ、摂食・嚥下に対する覚醒や姿勢を整え、安全な摂食・嚥下を行うために有用であることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の計画においては、認知症高齢者の摂食・嚥下機能のスクリーニング調査を台東区介護老人福祉施設にて行い、原始反射のスクリーニング調査や関連要因となる全身状態の調査を行うことができたが、健常者と認知症高齢者を対象とした脳機能測定が不十分であり、平成24年度以降継続して行っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に引き続き、健常成人の脳機能測定を行っていく。健常成人に対して行った測定プロトコールを再検討した後、初年度スクリーニング検査を行った認知症高齢者から同意の得られたものに対して、脳機能測定を行い、原始反射の発現状況に伴う脳機能変化部位と変化内容を計測する。その後最終年度にかけて、原始反射やマンチング出現症状による摂食困難に対する、摂食方法や介助方法の検討を行う。1.原始反射やマンチングが出現していない認知症高齢者を対象とした介入研究予防介入群とコントロール群:認知症高齢者30名ずつに対して、口腔関連器官に対する間接訓練を4か月間行い、原始反射、マンチングの出現状況を観察する。2.原始反射やマンチングの出現している認知症高齢者を対象とした介入研究摂食指導介入群とコントロール群:認知症高齢者それぞれ30名ずつに対して摂食指導の介入を4か月行い、出現している原始反射、マンチングに応じた食事介助方法を指導する。1、2どちらも効果の判定には脳機能評価を用いることとする。それまでのデータについてまとめ、報告書を作成し、3年間の研究で得られた成果を学会にて報告、論文発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度、同意の得られた健常者及び認知症高齢者を対象として脳機能測定を行うことを予定していたが、検診の日程調整の関係で昨年度中に行うことができず、その分の謝礼をくりこしている。今年度は脳機能測定を完了し、その分の謝礼として予定している予算を使用する。平成24年度及び最終年度は、学会発表のための必要経費(ポスター作製、旅費、学会参加費等)を予定している。
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