研究課題/領域番号 |
23659991
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研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
羽村 章 日本歯科大学, 生命歯学部, 教授 (60162921)
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研究分担者 |
菊谷 武 日本歯科大学, 生命歯学部, 教授 (20214744)
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キーワード | 歯学 / 社会系歯学 / 老年歯科学 |
研究概要 |
目的】摂食・嚥下の過程の中の先行期における食物認知の違いが脳の活性に与える影響を調べる【対象と方法】、スペクトラテック社製OEG-16を用いて、神経・筋疾患を持たない健常成人6名(平均年齢31.5±7.3歳)を対象として、安静時および他3つの条件における脳血流の測定を行った。条件1では、被験者は開眼した状態で、介助者が声掛けを行いながらゼリーを摂取させた。条件2では、被験者は閉眼した状態で、介助者は条件1と同様の声掛けを行い、ゼリーを摂取させた。条件3では、被験者は条件2と同様に閉眼し、介助者は声掛けを行わずに、スプーンを被験者の下唇に触れさせることで開口・ゼリーを摂取させる合図とした。すべての条件で、課題開始時より脳血流量の増加がピークに達するまでの時間を求めた。【結果】課題開始時から各チャンネルにおいて、脳血流の相対的増加量を測定し、そのピーク値を得る秒数を比較したところ、各被験者間で、被験者全員平均では有意な差は得られなかった。しかし個人内比較では、条件1、2間で6名中3名に有意な差が認められた(p<0.05)。3名の内訳は、条件2より条件1でピークに達するまでの時間が短いものが2名、条件1より条件2で短いものが1名であった。【考察】同じ声掛けを行った条件で、閉眼時より開眼時でより早い増加を見られた2名では、視覚情報により行動への準備が行われ、スムーズな反応の立ち上がりが得られたものと考えられる。また、条件1より条件2において速い増加が見られた1名では、視覚情報のない環境下での声掛けの重要性が示唆された。今回、有意差は得られなかったものの、個人間内において各条件でピーク値への時間の違いが見られ、外部情報の量により脳機能の活性に違いが生じた。このことより、介助者の食事介助方法や食環境整備が安全な摂食・嚥下を行うためには重要であることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
高齢者での測定を行うに当たり、常者での測定結果を基に、測定時プロトコールの調整を行っていたが、測定環境等の調整に時間がかかったため。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、前年度までの測定結果を基に、同意の得られた認知症高齢者に対して、脳機能測定を行い、原始反射の発現状況に伴う脳機能活性部位の変化、活性の表出の仕方の変化を計測する。その後、原始反射やマンチング発現状況による摂食困難に対する、摂食方法や介助方法の検討を行う。 最終年度であるため、それまでのデータをまとめ、報告書を作成し、3年間の研究で得られた成果を学会にて報告、論文発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度、対象施設における認知症高齢者を対象とした調査・測定を計画していたが、測定プロトコール作成等の遅れから調査・測定が十分に行うことができなかったため、対象者への謝礼等として予定していた分を繰り越すこととなった。 来年度は対象施設における調査・測定を開始するため、それに伴う対象者への謝礼、旅費、また最終年度であるためデータを解析し、学会発表、論文発表を行うための経費(ポスター作成、旅費)として使用する。
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