背景:褥瘡は骨突出部への圧迫による皮下組織の血流障害と脆弱な組織耐久性が引き起こす病態である。患者の汗や尿等により、皮膚温・湿潤度が上昇し、皮膚の脆弱化を招くことが推測され、近年寝床内環境との関連性が注目されている。本研究は、寝床内環境と褥瘡および皮膚変化との関係を明らかにすることを目的にした。初年度は、褥瘡発生リスクのある患者71名を対象に前向き調査を行った。多変量解析の結果、褥瘡または皮膚変化の発症には、褥瘡発生リスク尺度の点数とシーツの種類が関与していた。平成24年度は、体圧分散マットレスに備わる寝床内環境管理の効果について、健康人1名(30歳代女性・BMI標準)を対象に計測をした。方法:寝床内環境測定のための温湿度センサーを3か所に設置した。具体的には、①左右上前腸骨棘を結ぶ線と脊椎交点の3cm頭側点に一致するシーツ上、②①とシーツを挟んだ対称の位置にあるマットレスカバー上、③②とカバーを挟んだ対称の位置にあるエアセル上である。対象の腰部に皮膚温センサーを貼付した。測定手順は、対象に綿100%の寝衣を着用させ、皮膚温センサーを装着した。側臥位15分、仰臥位30分、側臥位30分の順で自力体位変換を行い、1分毎の各計測値をPC内に保存した。実験に使用した体圧分散マットレスには圧切り替え設定が、エアセルの膨縮差が中程度(対照設定)、エアセルの膨縮差が少ないもの(実験設定)の2種類ある。この上に綿100%平織シーツを使用して測定した。結果:皮膚温はいずれの設定も仰臥位開始時と比べ0.1度上昇し、側臥位に変更後は一定に推移した。実験設定における寝床内湿度はいずれの部位も仰臥位15分後に急に上昇した。寝床内温度変化は、対照と実験設定は同様で緩やかに上昇した。 以上からシーツや圧分散方式が寝床内環境に影響することが示唆され、患者の臥床環境に応じた具体的管理法が必要である。
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