本研究の目的は、移動用リフトの吊姿勢における筋緊張緩和効果を測ることである。すなわちリフトの吊姿勢では、重力の影響から解放されることで筋緊張が緩和される機会になっているのではないかという仮説を検証するものである。当初の実施計画では今年度、臨床での本実験を行う予定であったが、初年度に計測方法の検討で時間がかかり、パイロットスタディーを行うことができなかったため、今年度実施した。 実験室にて健常成人9名に、心電図、下顎筋電図、体表面圧の測定を行い、筋緊張の状態を把握した。移動用リフト上でバランスがとれている吊姿勢を基本として、ベッド上での安静仰臥位と移動用リフトのバランス不均衡な吊姿勢との比較を行った。その結果、被験者による差異はあるものの、バランスのとれた吊姿勢の時に、最も筋緊張が緩和する傾向にあった。また、移動用リフトの吊姿勢をとった後に仰臥位になる毎に、体表面圧が分散される傾向にあった。以上のような結果の理由については、今後さらに分析を進めていく。また、今後患者を対象とした本実験を行うために、パイロットスタディーの結果を踏まえて、プロトコールを洗練させたうえで実施する。
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