キャリア開発の基本理念は、看護職個々人と看護組織の相互作用により病院の理念や看護部の理念・目標を達成していくことで、直接ケアの質を上げることにある。その達成のためにキャリア開発プログラムが必要であり、それを構成する要素にはクニリカル・ラダー、クリニカル・ラダーに連動した教育プログラム、目標面接、処遇システムなどがある。また看護管理者との目標面接や日々の看護実践のフィードバックによってモチベーションを高め、それを継続していくための労働環境調整、ワーク・ライフ・バランス支援なども必要な要素となる。 平成26年度は、これらのキャリア開発への取り組みの構成要素から質問紙の項目を作成し、中小規模病院におけるキャリア開発プログラムの現状について調査をした。全国の200床未満の病院を対象とした結果、病院の機能や規模、開設者の考え方によって、看護職のキャリア開発プログラムの構成要素の違いが明らかになった。看護職のキャリア開発を展開している病院は看護管理者の教育を主軸にしながら様々な研修が実施されており、介護福祉士や看護補助者との連携がスムーズにいくよう工夫されていた。一方、労働環境調整やワーク・ライフ・バランス支援においては、キャリア開発を展開していない病院でも組織的支援は積極的に実施されていた。しかし、既存のキャリア開発プログラムを構成する要素を満たしている病院にはあまり見られなかった。 病院施設での試験的運用に関しては、一元化されたプログラムでは導入が困難であったために実施段階までには至らなかった。今後は看護職のキャリア開発を展開していない中小規模病院にスポットをあて、地域に根ざした中小規模病院の直接ケアの質の向上と看護職員の定着を促進するためのキャリア開発プログラムの構築を目指し研究を継続していく予定である。
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