研究課題/領域番号 |
23660015
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
真嶋 由貴恵 大阪府立大学, 高等教育推進機構, 教授 (70285360)
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研究分担者 |
前川 泰子 大阪府立大学, 21世紀科学研究機構, 准教授 (60353033)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 看護技術 / 暗黙知 / 形式知 / 学習支援システム / スキル分析 |
研究概要 |
本研究では,看護技術における「熟練の技(わざ)」や「コツ」などの「暗黙知」を体得するために,それらの特徴を多様な側面から定量的に明らかにして形式知として可視化することを目的とする.今年度は,脳波の測定を行い,その特徴の分析から技術の熟達の度合いを明らかにすることを目的に実験を行った.研究計画では静脈注射技術としていたが,初学者の熟達過程を調べるため,さらに単純な採血技術を採用した.脳波は時々刻々と変化する脳の自発的電気的活動を頭皮上の電極から記録したもので,そこから人のリラックス状態や緊張状態を判定することができる.脳波の成分指標としてβ波(覚醒・興奮時),θ波(入眠時),α波(リラックス時)がある.実験では,初学者(看護以外)10名および看護師2名によるシミュレーションモデルへの採血技術実施時の脳波を測定し,緊張や集中の評価,熟練による変化などを検証した.仮説は以下の2点とした.1)「熟練者は,無意識のうちに技術を行っているため,技術実施時にはα波が多く出現する」2)「熟練者は,先行処理に入る前に特徴的な脳波が出現する」.実験の結果,看護師は採血技術実施時の緊張が低く,集中が高い状態であることがわかった.初学者は10名中4名が緊張状態にあったことがわかった.しかし,初学者は初め緊張していても10回の繰り返し技術の中で回数を重ねるごとに落ち着いて集中できるようになる変化もみられた.先行処理についてはデータ分析中である.また,本研究では,「熟練の技(わざ)」や「コツ」などの「暗黙知」を体得させる学習支援システム開発のために,まず,複数の取得データを時系列に一括して表示できるシステムの開発を行った.これにより,視線映像と脳波,心拍,手指データなどのファイルを一括して表示でき,これまでできなかった各技術手順時に出現する生体データから看護スキルの特徴を分析することが可能となった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
看護技術における特徴を多様な側面からデータとして定量的に収集し,分析できることが明らかになった.また,ファイルを一元表示できるシステムを開発し,より分析しやすい環境を構築した.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,暗黙知の可視化方法と学習支援システムデザインの検討を行う.平成23年度に収集した視線,脳波,手順,手指動作などのデータを解析する.さらに,磁気を使用する手指センサーによる脳波計への干渉を回避する測定方法を検討するなど,実験のプロセスを改善し,熟練した技術をもつ看護職および看護学生を対象に同様のデータを収集する.これらの結果をもとに看護技術の暗黙知を統合して可視化(形式知化)する方法と,学習支援システムとしてのデザインを検討する.得られた結果を取りまとめ,成果の発表を行う.連携協力者として以下の研究者からアドバイスを得ながら推進する.[連携協力者] 和歌山大学 システム工学部 准教授 曽我真人 摂南大学 理工学部 教授 川野常夫
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次年度の研究費の使用計画 |
取得したデータの分析・加工作業,被験者への謝金が必要である.看護技術の暗黙知を形式知にして体得させるための学習支援システムの一部をモジュールとして開発する.そのための開発費が必要である.データ分析,解釈は研究チームで行うため,各所属施設へ移動する交通費が必要である.情報収集ならびに成果報告のための学会参加費,旅費が必要である.データの保存のためのメディア,分析ソフト,事務用品など消耗品費が必要である.
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