最終年度はこれまでの研究結果をもとに、舌マッサージを取り入れた口腔ケアプログラムの効果について検討を行った。【対象】特別養護老人ホームの入居高齢者80名(男性12名、女性68名、平均年齢88.7歳、70~104歳)を対象とした。【方法】研究者らが開発した舌機能簡易指標を用いて、スクリーニングを行い、舌機能の低下が疑われる者に関して3カ月間、舌マッサージを主とした介入を実施した。介入方法は介護スタッフと話し合い対象者の状態を見ながら週に1回は実施してもらうよう調整し、実際の実施内容を簡単に記録してもらった。【結果】80名中、舌機能が良好と判断された者は20名(25.0%)、低下傾向であると判断されたものは17名(21.3%)、機能低下と判断された者は11名(13.8%)、認知症や意識低下等により検査できなかったものは23名(28.8%)であり、舌機能の低下が疑われる28名を介入の対象とした。舌マッサージを受け入れた者は10名(35.7%)、最初から嫌がった者5名(17.9%)、途中から中止を希望した者11名(39.3%)、体調悪化のため研究参加を中断したもの2名(7.1%)であった。他者からの舌マッサージは嫌ったが自分でマッサージを続けたものが4名(14.3%)いた。マッサージを嫌った者、中断した者(体調不良者を除く)の3名は機能が低下し、6名は変化がなく、3名は機能が向上した。他者からされるのは嫌がったが自分でマッサージを継続したものは機能が大きく改善していた。マッサージを実施した者すべてにおいて機能の向上がみられた。【結論】本研究において検討された舌機能向上のためのマッサージを中心としたプログラムは効果が期待できるが、認知症、意識低下、好みにより実施できない事例も多いことが明らかになった。今後、認知症等があっても受け入れてもらえる方法を模索することが必要だと考えられた。
|