研究課題/領域番号 |
23660025
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研究機関 | 東京有明医療大学 |
研究代表者 |
金井 一薫 東京有明医療大学, 看護学部, 教授 (10215402)
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研究分担者 |
川上 嘉明 東京有明医療大学, 看護学部, 准教授 (20582670)
千葉 喜久也 東京有明医療大学, 看護学部, 准教授 (70326718)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | コミュニティ・ナース / コミュニティ・ケア / コミュニティ・ナーシング / 人材育成 / 生活支援型看護モデル / 養成カリキュラム |
研究概要 |
本研究の目的は、子ども・高齢者・障がい者が地域で暮らすことを支えるように訓練された"コミュニティ・ナース"を想定し、その養成の可能性を探り、"コミュニティ・ナース"に必要な資質と能力を具体的に抽出し、人材育成に必要な養成カリキュラムを設定して、今後の看護師教育の中で育ち得る生活支援型の新たな看護師の役割を提言することにある。 そのための研究方法として、(1)調査研究と(2)ドイツの職業教育の研究及び視察を設定した。23年度の計画はほぼ予定通りに行われた。 (1)調査研究は、i:その対象を東京都23区及び全国政令指定都市の19都市に存在する、地域ケアの現場(地域包括支援センターと訪問看護ステーション)で最先端の仕事をしている看護職及び福祉職とした。2000カ所に宛てて調査書を送付し、657通(34,6%)の回答を得た。ii:調査書の内容は「地域ケアにおいて看護師が現在有している能力」と「今後期待される能力」の2点について問うものであり、結果として、ほぼ期待通りの内容が得られ、これからの"コミュニティ・ナース"に必要な資質と能力が明らかになった。調査内容については、オリジナルな調査項目を作成し、パイロットスタディを経た後に全国に配送した。 (2)ドイツの職業教育研究は、ボローニャ・プロセスを踏まえた上で、あらかじめドイツの教育体制全般についての学習を行い、その知識の上に立って、具体的な看護教育体制と実践の実態について調査すべく、視察を実施した。ドイツにおける看護教育は、大きな変革の時代を迎えており、日本と同様「超高齢化」「病院日数の短縮」「地域医療・ケアへのシフト」という課題に対して、新たな枠組みを作ろうとしている。この変革の中で実現されつつある理念を通して、"コミュニティ・ナース"に必要な資質と能力を抽出できると考える。 以上の研究を通して、本研究の目的はその実現に向けて大きく前進した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究の目的」実現のために研究に取り組んだ結果、現在はほぼその目的を達成しつつある段階にある。その理由は以下である。 1.調査研究の結果から、予想した以上の成果が得られたのは、アンケート内容の設問が適切であったこと。さらに本テーマに対して地域ケア実践者たちが関心を抱いたためと考察する。さらに「コミュニティ・ナース養成」という課題が、当事者たちにとって切実な問題として認識され、彼らが求めているテーマとも合致したためと考えられる。 2.ドイツの職業研究と視察において一定の成果を得たのは、事前に行った文献研究と専門家による講義聴講、さらには先行視察団からの聞き取り調査が効を奏したものと思われる。さらにドイツにおける現地視察が有意義なものとなったのは、視察先の選定が適切であったことに加えて、通訳者兼コーディネーターが、本テーマについて十分な知識を保持しており、協力的だったお蔭である。 3.初年度に一定の成果が挙がったのは、研究分担者と研究協力者たちとのチームワークの良さがもたらしたものである。 以上、自己点検における評価をふまえて、達成できた理由を考察した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の推進方策について。 1.調査研究の結果の考察をさらに深め、コミュニティ・ナースとして必要な能力について明らかにし、それらの能力がどのようなカリキュラム構成から得られるのかについて、十分な討議を行う。 2.ドイツ視察によって入手した大量の文献を翻訳しつつ、ドイツで展開されつつある「伝統的な職業教育」と「大学で行われるアカデミズム教育」の融合の方向性を確認し、コミュニティ・ナース養成にとって、コアとなる理念について明らかにし、現行の「モジュール式」教育カリキュラムの利点について考察する。 3.日本における看護教育と介護福祉士教育の今後の在り方について、ドイツの老年看護師養成の推移に照らし合わせ考察し、その結論をコミュニティ・ナース養成のカリキュラムに反映させる。 4.研究協力者を交えての討議を行い、研究テーマにそった結論を導き出す。 5.日本看護科学学会等の関連学会で発表できる機会を多く作り、本テーマについて、また本テーマから得られる内容について社会に提言し、それをもって社会貢献とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の使用計画は、以下のとおりである。 1.ドイツ視察の際にお願いした「通訳兼コーディネーター」への交通費・謝金・宿泊費を支払う。 2.研究協力者たちとの研究懇談会を開催する。そのための会議費、講師への謝金及び交通費を支払う。 3.学会発表に向けての準備に必要な消耗品を購入する。 4.その他:通信費等に充当する。
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