研究課題/領域番号 |
23660030
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研究機関 | 聖隷クリストファー大学 |
研究代表者 |
樫原 理恵 聖隷クリストファー大学, 看護学部, 助教 (00570540)
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キーワード | 看護師の組織文化 / 離職 / 看護管理者 / スタッフナース |
研究概要 |
看護組織が、スタッフナースの定着を促進するための取り組みについて明らかにする目的で、看護管理責任者らへのインタビュー調査のデータをテキストマイニングソフトを使用し再分析した。その結果、「経営陣への働きかけ」として看護部長らが病院組織運営に関わり、経営側の意向をスタッフらに周知すると共に勤務時間の調整などの対策を積極的に働きかけていることが明らかとなった。また、インタビューデータの最頻度の単語は「師長」であり、ついで「スタッフ」であった。その2語に共起している単語から看護部長らは看護部‐師長間、師長-スタッフ間のコミュニケーションが大きな要因だと認識していることが明らかとなった。また看護部長らは、面接などを通して個々のスタッフと直接コミュニケーションを取ることが重要であると認識していた。これを基に、看護師長の上司、あるいはスタッフに対するコミュニケーション能力について質問紙調査を実施した。 合わせて組織文化の測定尺度、定着可能度を用いた大規模調査に向け研究対象施設を選定し、質問紙について検討した。聖隷クリストファー大学倫理委員会へ審議を依頼し、承認を得た。その結果関東地区、中部地区の100~400床、500~800床の施設を病院機能評価機構受審病院から無作為地に抽出し調査依頼を97施設に実施した。了承を得られた東海地区、北陸地区の24病院に調査用紙を配布した。病院によっては全数調査を希望する看護管理責任者もおられ、希望に沿って配布数を増加し計1895名を対象に調査用紙を配布した。調査結果は現在回収中である。 また、情報収集のため、アイルランドのホスピスや病院へ赴き看護管理等について施設見学等を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
看護組織の管理者が求めている組織文化やスタッフナースの定着への取り組みについて、インタビュー結果を再分析することで課題が明らかとなった。組織文化の認識が看護管理責任者とスタッフナースの間で乖離が生じている一因には、看護師長のコミュニケーション能力が影響していることが推察された。そのため、看護師長が実践している看護部管理者とスタッフナースへのコミュニケーションスキルをリーダータイプ別に分類し、看護部管理者の考える看護組織運営の方略の情報の浸透、組織内での円滑なコミュニケーションスキルについて検討することを目的に質問紙調査を実施した。 並行して、看護組織の測定尺度と定着可能度を使用した質問紙調査の対象地域、施設規模について検証し調査依頼施設を選定した。97施設に調査依頼した結果、27施設から調査の承諾を得ることができ、質問紙調査が実施できた。2009年度に同様の質問紙調査を実施した3施設が対象に含まれており、組織文化の醸成など新たな視点で分析することが可能となった。 分析に十分な量が確保できなければ、対象施設を新たに選定し追加調査する必要があるが、現時点での回収率は50%程度となっている。
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今後の研究の推進方策 |
現在回収中の質問紙調査のデータを整理・分析する。地域、規模、設置母体等の相違が看護師の組織文化にどのように影響しているのか考察する。前回調査と比較できる施設については、スタッフナースが認識している組織文化が経年変化するのか否かについても検証する。インタビュー調査等から得られている課題について検証するとともに、定着を促進する組織づくりに必要な方略を考察する。 考察した結果について、学会等で発表し他研究者らと意見交換を行い新たな知見を得る。 研究の最終年度に当たるため、得られたデータや新たな知見等を踏まえ、看護師の定着を促進する組織運営モデルを検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
質問紙調査のデータ分析と追加調査の検討。質的分析にはテキストマイニング解析ソフトを購入し分析を行うために使用する。 看護管理者、スタッフナース双方が求める組織文化を明らかにし得られたデータ、課題、考察内容について、他研究者との情報交換や看護系学術集会等への参加にかかる出張旅費として使用する。 研究分野に関連する論文や発表などを見分し新たな知見を得るための文献を収集するために使用する。
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