研究課題/領域番号 |
23660038
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
樗木 晶子 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60216497)
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研究分担者 |
川本 利恵子 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40144969)
中尾 久子 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80164127)
宮園 真美 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (10432907)
肥後 太基 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10457426)
井手 友美 九州大学, 大学病院, 講師 (90380625)
安藤 眞一 九州大学, 大学病院, 特任教授 (90575284)
樗木 浩朗 保健医療経営大学, 保健医療学部, 教授 (70607093)
眞茅 みゆき 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員研究員 (60415552)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 医療・福祉 / 看護学 / 循環器・高血圧 / 内科 / 臨床 |
研究概要 |
睡眠時無呼吸症候群は気道の閉塞や呼吸中枢の機能不全により睡眠中に繰り返し呼吸が停止する疾患群である。慢性心不全患者の多くが合併している睡眠障害は生活の質の低下や心不全悪化と関連している。これまで、下肢加温療法の主観的な睡眠改善は検討されているが客観的な睡眠への効果は不明であった。系統的な睡眠ケアを構築するために慢性心不全患者において睡眠時無呼吸症候群の有無を配慮した睡眠障害を客観的な手法も用いて検討した。急性期心疾患を伴わない睡眠時無呼吸症候群が疑われる入院中の慢性心不全患者に対して、睡眠障害のタイプと重症度をOSA睡眠調査票およびセントマリー睡眠質問票、ESS(Epworth Sleepiness Scale)日本語版にて、まず主観的に評価した後、簡易型終夜睡眠ポリグラフィー(脳波、呼気流、経皮的酸素分圧、眼電図、頤筋電図、胸郭運動など)で、睡眠時無呼吸の精密検査・診断を行った。その後、睡眠看護ケアプログラムとして膝下を温める遠赤外線下肢加温療法を導入した。下肢加温療法は遠赤外線足温器を用いて15分間45℃で加温した後、30分間保温状態で深部体温を0.5℃程度上昇させる方法であり、就寝前1時間前に行った。これを3日間施行した後、再度、簡易型終夜睡眠ポリグラフィーにて睡眠に対する効果を評価した。経鼻的持続陽圧呼吸療法や酸素吸入療法を追加するか否かは足温療法への反応を見て決定した。有効例は外来通院にて長期観察している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
安定した慢性心不全患者11名(男性7名、女性4名、年齢59.5±11.5歳、NYHAII-III)に下肢加温療法の安全性を以下のように確認した。室温22℃において臥位にて膝下部を遠赤外線足温器に入れ、毛布で下半身を覆った状況で15分間45℃の加温後、30分間足温器に足を入れたまま保温した。その間、血圧、心拍数、熱流補償法による深部体温(額部)、皮膚温(前腕部)、SpO2を連続的に測定し、体重の測定、主観的温冷感、温熱的快適感及びJUMACL(Japanese UWIST mood adjective checklist)による気分調査を下肢加温の前後で行った。この結果、血行動態の有意な変化無く体温の上昇を平均0.4℃得ることができたので睡眠障害のタイプと重症度をOSA睡眠調査票およびセントマリー睡眠質問票、ESS(Epworth Sleepiness Scale)日本語版にて、3日間の下肢加温療法前後で主観的に睡眠評価を行った。さらに3名(男性3名、年齢52.7±4.6歳、NYHAII-III)には3日間の下肢加温療法の睡眠構築や睡眠障害に対する効果を脳波・筋電図・気流センサー、パルスオキシメーター等を用いる終夜睡眠ポリグラフィーで客観的に評価した。この結果、主観的な睡眠評価においては夢見と夜間覚醒回数にて有意に改善し(P<0.05)、また、終夜睡眠ポリグラフィーでは施行3日目の全睡眠時間に占める徐波睡眠(StageIII/IV)の割合は介入前と比べ12.9±11.9%有意に増加した。このように下肢加温療法は3日間施行することで徐波睡眠が増加することが確認された。下肢加温療法は客観的にも慢性心不全患者の睡眠の質を改善することが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、下肢加温療法に対する主観的睡眠調査と終夜睡眠ポリグラフィーを用いた客観的評価を慢性心不全患者20例においてさらに検討する予定である。初年度は、新たな研究テーマであったため計測機器の購入や円滑に行える人的体制を整備するのに時間を要したが、研究の主旨も九州大学病院ハートセンターや睡眠時無呼吸センターにおいて周知され、この1年間で協力体制も確立できた。今年度は症例の蓄積が重要であり積極的に研究結果のフィードバックを行いながら九州大学病院での症例を増やして行く予定である。また、中間検討を8月には行い、症例の集まりが悪い場合には九州大学病院以外の施設にも協力を要請する予定である。その候補の一つとして研究分担者(睡眠時無呼吸センター長、安藤真一)が副院長として併任している社会福祉法人恩賜・財団済生会支部福岡県済生会二日市病院を考えている。その根拠としてはすでに睡眠時無呼吸診療システムが確立されており、専門の検査技師が配属されていること、循環器専門医の協力を得やすいこと、対象となる症例が多いことが上げられる。現在、済生会二日市病院の倫理委員会に本研究計画の審議を依頼中である。また、平成24年度より研究代表者(樗木晶子)に新たな博士課程大学院生3人が配属され今後、研究協力者として研究を推進する。睡眠に関するアンケート調査に関してはその解析方法を本学の人間環境学府の専門家に協力を依頼し、症例の蓄積と平行してデータの解析を行って行く予定である。さらに、研究チームとして毎週、研究検討会を開催し遅滞なく進行するように努める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度には睡眠時無呼吸の終夜モニターとしてフィリップス社製 AlicePDxを少額備品として購入し、心不全患者における睡眠障害の詳細な検討を行っている。平成24年度以降は研究のための検査機器などの備品の購入は不要であるが、症例も今後さらに20症例の追加を予定しており、これに対応するために遠赤外線下肢加温装置を10台(@30,000円x10台)購入する必要がある。また、詳細なデータの解析が必要となるので専門家に200時間程度、解析を依頼する予定である。この人件費(@1,300円x200時間)が必要である。個人情報保護の観点から通常のネットワークから遮断した専用のノートパソコンを用いて解析することになるので1台ノートパソコンの購入が必要となる見込みである(@200,000円)。その他はAlicePDx検査のための電極、テープ、等の消耗品を購入する必要がある(50,000円)。さらに研究成果が上がってきており、学会発表も多くなる予定であり、国際学会も含めた学会参加のための旅費・宿泊費など必要である(@150,000x2人)。以上、合計1,100,000円を使用する予定である。
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