研究課題/領域番号 |
23660038
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
樗木 晶子 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60216497)
|
研究分担者 |
川本 利恵子 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40144969)
中尾 久子 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80164127)
宮園 真美 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (10432907)
肥後 太基 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10457426)
井手 友美 九州大学, 大学病院, 講師 (90380625)
安藤 眞一 九州大学, 大学病院, 特任教授 (90575284)
樗木 浩朗 保健医療経営大学, 保健医療学部, 教授 (70607093)
眞茅 みゆき 北里大学, 看護学部, 准教授 (60415552)
|
キーワード | 睡眠障害 / 心不全 / 終夜睡眠ポリグラフィー / 下肢加温療法 |
研究概要 |
一般の睡眠時無呼吸症候群患者の多くが気道の閉塞で起こるのに対し、心不全患者における睡眠呼吸障害は呼吸中枢の機能不全により睡眠中に繰り返し呼吸が停止することが多く見られる。慢性心不全患者の多くが合併している睡眠障害は生活の質の低下や心不全悪化と関連している。我々のこれまでの研究では下肢加温療法の主観的な睡眠改善を検討してきたが、客観的な睡眠への効果は不明であった。系統的な睡眠ケアを構築するために慢性心不全患者において睡眠時無呼吸症候群の有無を配慮した睡眠障害を客観的な手法も用いて検討した。 急性期心疾患を伴わない睡眠時無呼吸症候群が疑われる入院中の慢性心不全患者18例 (男性13例、平均年齢 55±14歳) に対して、睡眠障害のタイプと重症度をOSA睡眠調査票およびセントマリー睡眠質問票、ESS(Epworth Sleepiness Scale)日本語版にて、まず主観的に評価した後、簡易型終夜睡眠ポリグラフィー(脳波、呼気流、経皮的酸素分圧、眼電図、頤筋電図、胸郭運動など)で、睡眠時無呼吸の精密検査・診断を行った。その後、睡眠看護ケアプログラムとして膝下を温める遠赤外線下肢加温療法を導入した。下肢加温療法は遠赤外線足温器を用いて15分間45℃で加温した後、30分間保温状態で深部体温を約0.4℃程度上昇させる方法であり、就寝前1時間前に行った。これを3日間施行した後、再度、簡易型終夜睡眠ポリグラフィーにて睡眠に対する効果を評価した。この結果、睡眠調査では夢見などにおいて改善をみた。脳波では浅睡眠(脳波stageI)が減少し(73→57分)、より深い睡眠へと移行していた。以上の結果から、下肢加温療法により全身の体温が上昇し、安定した睡眠改善効果が得られると考えられた。今後、慢性心不全患者が自宅で長期使用した時にどのような効果が見られるか検討する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度は入院中の不眠を訴える20例の慢性心不全患者において睡眠障害のタイプと重症度をOSA睡眠調査票及びセントマリー睡眠質問票、ESS(Epworth Sleepiness Scale)日本語版にて主観的に評価した後、簡易型睡眠時モニターにより睡眠中の血液酸素飽和度、脳波の検討を行う予定であった。ほぼ予定どおり18例の症例を検討した。この結果、これまで我々が主観的調査にて睡眠障害の改善を裏付ける客観的所見を得ることができた。心不全患者における体温の適度な上昇は睡眠の質を向上させることが客観的に示されたといえる。来年度にむけた外来患者での長期下肢加温療法による介入研究にむけた準備もすすみ、この点では非常に順調に進行している。また、業績欄に詳細は記入しているが、本研究を国際誌(Internal Medicine 51:2263-2270, 2012)に発表でき、日本循環器学会、日本生体医工学会、日本循環器病予防学会、日本看護科学学会などでも発表する事ができた。以上の理由より「(3)順調に進展している」と自己評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、下肢加温療法に対する主観的睡眠調査と終夜睡眠ポリグラフィーを用いた客観的評価にくわえて長期の下肢加温が睡眠に及ぼす影響を検討する予定である。症例の蓄積が重要であり、積極的に研究結果のフィードバックを行いながら九州大学病院での症例を増やして行く予定である。また、研究分担者(睡眠時無呼吸センター長、安藤真一)が副院長として併任している社会福祉法人恩賜・財団済生会支部福岡県済生会二日市病院の協力もえて症例を積み重ねてゆく予定である。その根拠としてはすでに睡眠時無呼吸診療システムが確立されており、専門の検査技師が配属されていること、循環器専門医の協力を得やすいこと、対象となる症例が多いことが上げられる。すでに済生会二日市病院の倫理委員会に本研究計画の承認をえている。また、平成25年度より研究代表者(樗木晶子)の研究室に所属する博士課程大学院生4人を研究協力者として研究を推進する。睡眠に関するアンケート調査に関してはその解析方法を本学の人間環境学府の専門家(宮島健氏)に協力を依頼し、症例の蓄積と平行してデータの解析を行って行く予定である。さらに、研究チームとして毎週、研究検討会を開催し遅滞なく進行するように努める予定である
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度に睡眠時無呼吸の終夜モニターとしてフィリップス社製 AlicePDxを少額備品として購入したので高額な機器は整備されている。平成25年度は研究のための検査機器などの備品の購入は不要であるが、症例も今後さらに20症例の追加を予定しており、これに対応するために長期貸出用の遠赤外線下肢加温装置を5台(@30,000円x5台)購入する必要がある。また、詳細なデータの解析が必要となるので専門家に100時間程度、解析を依頼する予定である。この人件費(@1,300円x100時間)が必要である。個人情報保護の観点から通常のネットワークから遮断した専用のノートパソコンを用いて解析することになるので1台ノートパソコンの購入が必要となる見込みである(@100,000円)。その他はAlicePDx検査のための電極、テープ、等の消耗品を購入する必要がある(20,000円)。さらに研究成果が上がってきており、学会発表も多くなる予定であり、国際学会も含めた学会参加のための旅費・宿泊費など必要である(@150,000x2人)。以上、合計700,000円を使用する予定である。
|