研究課題/領域番号 |
23660045
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研究機関 | 淑徳大学 |
研究代表者 |
松岡 秀明 淑徳大学, 国際コミュニケーション学部, 教授 (80364892)
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研究分担者 |
岩崎 紀久子 淑徳大学, 看護栄養学部, 教授 (80332930)
渡部 真奈美 藤田保健衛生大学, 医療衛生学部, 准教授 (50341780)
池田 光穂 大阪大学, 学内共同利用施設等, 教授 (40211718)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 終末期医療 / 看護師 / 困難 / 患者の自己決定 |
研究概要 |
終末期医療をになう緩和ケア病棟は看取りの場であるため、医療従事者のなかで看護師が重要な位置を占めており、実質的に病棟を運営している場合も少なくない。だが、拠点病院でも彼らは日々さまざまな困難に直面しつつ患者のケアを行なっているのが実情である。そして、諸々の困難のなかには患者の自己決定権とかかわっているものも少なくない。このことは重要な問題と考えられるが、これまであまり研究されてきていない。研究代表者の松岡はフィールドワークを行なう過程で、医療従事者が直面するさまざまな困難が重要な研究課題であるという認識を得た。 本研究の目的は、背景を異にする三つの緩和ケア病棟でフィールドワークを行ない、2年間で以下の3点を明らかにすることである。(1) 緩和ケア病棟で看護師はどのような困難と直面しているのか、(2) 彼らがそれら困難をどのように解決していくプロセス、(3) それら困難は、緩和ケア病棟における患者の自己決定権とどのように関係しているのか。 研究分担者の岩崎と渡部はさまざまな問題に直面し、調査が予定していたようには遂行できていない。しかしながら、研究代表者である松岡はフィールドワークを順調を行なってきており、緩和ケア病棟において患者の自己決定を支えるためのケアをめざした看護師たちの創意工夫を明らかにしつつあり、その成果を日本文化人類学会(平成23年6月)日本臨床死生学会(同11月)で発表を行った。また、著作として公表する予定である(印刷中)。渡部は、緩和ケア病棟で調査を行なう際に遭遇した困難さについて、日本で高齢者の人口比率は増加しており、今後医師のみならず看護師が苦痛の緩和に立ち会う機会は否応なしに増加していくと考えられる。その際に、緩和ケア病棟において看護師がどのような困難に遭遇し、それをどのように解決しているのかを検討する本研究は参考となることを確信している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者である松岡は国立病院機構東京病院(東京都清瀬市)において、学期間中は週1回程度、夏季休暇期間中は週3~4回程度、参加観察とインタビューを中心としたフィールドワークを行なった。そこで得られたデータを分析し考察を加え、日本文化人類学会(平成23年6月)日本臨床死生学会(同11月)で学会発表を行なった。アメリカ人類学会(同11月)においては、現代社会におけるホスピスや緩和ケア病棟における死に関する発表を聞き、発表者たちと意見を交換することができた。また、丸善出版が刊行する『シリーズ生命倫理学第4巻 終末期医療』の12章「死、生、死、ブリコラージュ:緩和ケア病棟で看護師が経験する困難への医療人類学からのアプローチ」を執筆した(平成23年度中に脱稿し出版社に提出しているが、出版社によれば、本年夏までには刊行される)。 渡部は、勤務先である藤田保健衛生大学の第一教育病院(愛知県豊明市)緩和ケア病棟藤田保健衛生大学の緩和ケア病棟においてフィールドワークを行なったが、研究に対して病棟は拒絶的であり、調査は容易ではなかった。この事態にかんして、平成24年2月に臨床実践の現象学研究会で発表を行なった。岩崎は、勤務先の淑徳大学看護学部の学生実習の受け入れ先でもある聖隷佐倉市民病院で看護師に対してインタビューを行ない、分析中である。 ミーティングは5月と10月の2回行ったが、初回には松岡、岩崎、渡部、2回目には全員が参加した。2回目のミーティングでは、アドバイザーの池田から示唆に富む指摘が多々あり、アドバイザーを依頼したことのメリットが遺憾なく発揮された。以上を勘案して、本研究はおおむね順調に進展していると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
松岡は、国立病院機構東京病院でこれまでと同じスケジュールでフィールドワークを行なう。今後は、患者の自己決定とかかわる重要な事項である鎮静について、参加観察を行なうとともに、看護師を中心とする医療従事者、患者、患者の家族に対してインタビューを行なう。鎮静にかんする発表を、5月には保健医療社会学会、6月には文化人類学会で発表を行なうことが決定している。また、10月から11月には、日本臨床死生学学会、日本生命倫理学会で発表するために、発表を申し込みを行なう。渡部は、勤務先が藤田保健衛生大学から豊橋創造大学にかわったこと、「現在までの達成度」に示したように藤田保健衛生大学の第一教育病院緩和ケア病棟が調査に拒絶的だっとことを勘案して、フィールドを新たに開拓することになっている。岩崎は、勤務先での業務が多忙を極めており、平成23年度に得られたデータの分析を行なう。 本年度の第1回目ミーティングは、岩崎を除く全員が参加する第38回保健医療社会学会(於神戸市看護大学)で行なう予定となっている。
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次年度の研究費の使用計画 |
松岡は、書籍代、調査地までの交通費、インタビューで録音した音声データを活字化する作業にかかる代金(いわゆるテープ起こし代)に研究費を使用する。渡部は、調査地までの旅費、ミーティングに参加するための旅費に研究費を使用する。アドヴァイザーである池田はミーティングの際の旅費に研究費を使用する。岩崎は勤務先での職務がきわめて多忙なため、これまでのデータを整理するための文具等々のための物品費として研究費を使用する。
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