研究課題/領域番号 |
23660046
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研究機関 | 東京工科大学 |
研究代表者 |
野澤 美江子 東京工科大学, 医療保健学部, 教授 (40279914)
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キーワード | がん生殖 / 生殖看護 / がん看護 / 妊孕性 / 配偶子凍結 |
研究概要 |
本研究は、がん医療と生殖医療が協働で取り組む、生殖組織/配偶子の凍結に対するがん患者の意思決定支援の在り方を探求することを目的としている。本年度は、昨年度に引き続き、がん患者の意思決定の様相を明らかにするために、生殖組織/配偶子の凍結に関わった経験を持つ看護師5人と、精子を凍結し化学療法を行った患者1人を対象にインタビュー調査を実施した。昨年度のデータと合わせ分析した結果、凍結に対する意思決定は、がんに対する取り組みと並行して行われており、成熟期にある男女は既婚の有無に関わらず妊孕性温存の方法を模索していることが明らかになった。男性は「母親や医師の後押し」によって「とりあえず」「子どもを望み」凍結し、その後は凍結した精子を「安心を与える存在」と捉えていた。一方女性は「治療を頑張る糧に」「子どもを授かりたい」と凍結を決断していた。その間看護師は「医師や他部門と情報の共有」や「治療の調整」をはかりながら、本人及び家族の「告知時の混乱、再発や移植の不安に寄り添い」ながら、適宜「情報提供」を行い、意思決定を支援していた。これらのプロセスには妊孕性温存に対する医師の認識が大きく影響しており、意思決定支援のための「情報提供のタイミング」、その「内容」、「担当者間の連携」も含めた「その後のサポートシステム作り」のニーズが見出された。 また、意思決定支援の実態を明らかにするための実態調査に向けて、インタビュー結果を元に質問紙を作成し、専門家によるスーパーバイズを受けた。質問紙送付先であるがん拠点病院に勤務する乳腺専門医及び血液専門医のリストを作成し、対象者が多忙となることが予想される春先を過ぎたら配送できるように、準備を進めた。さらに、本研究の成果をもとに、がん患者の意思決定を支援するツールとして、Webサイト「がんと妊娠を考える」を構築中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
がん患者の生殖組織/配偶子の凍結に関わった経験を持つ専門看護師及び認定看護師、配偶子を凍結した患者様のリクルートをスムーズに遂行するために、昨年度研究の推進方策であげたように、スノーボールサンプリングに加え、連携研究者及び研究協力者と共に検討した。その結果、看護師へのインタビューは順調に進められたが、患者のリクルートには苦慮し、時間を要した割には1人しかインタビューの協力を得ることができなかった。 その影響で研究計画が滞り、質問紙調査の予定時期が遅れてしまった。同時期に他の研究者が同じ対象者(医師)に一部調査内容の重なる質問紙調査を実施したことが発覚した。そこで、回収率にも影響することを鑑み、対象者の負担を考慮し、調査時期を延期せざるを得ない状況となった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度延期となった医師及び看護師を対象とした質問紙調査を行い、がん患者の意思決定及びその支援の様相を明らかにする。それと共に、がん看護専門看護師、がん化学療法看護/乳がん看護認定看護師、不妊症看護認定看護師の協力を得て、「がん患者の意思決定支援の在り方検討会」を開催し、意思決定を支援するシステムを提案する。 前者の実施に当たっては、送付する対象者の平成25年度更新情報を確認した上で、研究協力者からの情報提供を元に臨床の動向に合わせて適切な時期に調査用紙を配布する。後者については、協力者のリクルートがスムーズに遂行できるように連携研究者及び研究協力者と検討を重ねる予定である。さらに、今年度と大きく変わった状況として、「日本がん・生殖医療研究会」が聖マリアンナ医科大学の鈴木教授を中心に立ち上がり、研究代表者もそこに参画することになったことがあげられる。そこでの連携を活かして、今後は研究を遂行していこうと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は質問紙調査が滞ってしまったため、その結果を受けて「がん患者の意思決定支援の在り方検討会」の開催までできず、それに関連した経費が執行できなかった。加えて、それらの成果を公開するためのWebサイトの構築も中断している。そこで、次年度はそれを実施するために、下記の研究費の執行を計画している。 国内旅費:「がん患者の意思決定支援の在り方検討会」協力者の旅費 謝金:データ入力を依頼する研究補助者への謝金 その他:調査用紙の発送費、会議費、結果をWebサイトに搭載するために業者に支払う費用等 なお、不足に関しては、自己負担で対応する予定である。
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