研究課題
現代社会では有病高齢者の割合が増加し、要介護者のうち、脳血管疾患が占める割合が全体の29.3%と最も高く、そのうち40%前後に摂食・嚥下機能が起こるとの報告がある。摂食・嚥下機能療法の一つである嚥下体操は肺活量の減少による咳反射の低下の予防や肩や首の運動による舌運動に関連する筋の刺激,顔の運動による表情筋の刺激など様々な効果が期待でき,介護施設において集団で行え,高齢者自らが手軽にできることより普及している。本研究プロジェクトにおいて、この嚥下体操の唾液中の活性酸素消去能(抗酸化能)に及ぼす効果について検討したので報告する。研究の目的と方法を説明して、同意が得られた者で、反復唾液嚥下テストおよ水飲みテストが正常であり、過去において嚥下障害を認めなかった者を対象とし唾液採取上清中のヒドロキシラジカル、スーパーオキシド、一重項酸素の消去活性を電子スピン共鳴(ESR)法により測定し,嚥下体操との関連性を検討した。すべての被験者において、ヒドロキシラジカル、スーパーオキシド、一重項酸素のすべての活性酸素種において嚥下体操前に比較して嚥下体操後で消去活性は上昇した。健常者においては、嚥下体操を行うことにより、唾液中の活性酸素消去能が向上した。これは嚥下体操を行うことで、活性酸素産生を消去する抗酸化システムを強化する反応がみられた可能性が考えられた。食前に嚥下体操を行うことで、摂食・嚥下に関する筋機能の活性化のみではなく、唾液中の抗酸化作用による生体に対する抗酸化システムにおける防御機構が活性化された。ヒドロキシラジカル、スーパーオキシド、一重項酸素による酸化ストレスが原因の脳血管障害による摂食嚥下障害を防ぐ抗酸化能が唾液において確認されたことから、嚥下体操の習慣化により先の疾患を原因とする高齢者の誤嚥性肺炎の予防効果も期待できると考えられた。
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