研究課題/領域番号 |
23660056
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐藤 祥子 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50271961)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | NICU / 搾乳 / 肯定的体験 |
研究概要 |
本研究の目的は、NICUに入院した新生児を持つ母親が母乳分泌量の維持の体験を明らかにすることである。平成23年度は、予備調査を終了し本調査を開始、母親の搾乳への思いを中心に分析し、母親の搾乳体験を明らかにした。 対象者は、妊娠23週から妊娠34週未満で出産した初産婦9名で,産後1か月の時点で児がNICU入院中であり、母乳分泌量が500ml/日以上の母親である。平均年齢は28歳であった。本研究は、東北大学大学院医学系研究科倫理委員会の承認を得て実施した【承認番号2011-169】。 分析の結果、【いたみの体験】、【いわれるがままの搾乳】、【搾乳の困難にぶつかる】、【家族の助け】、【ポジティブな思い】、【自分のライフスタイルに合わせた搾乳】の6つのカテゴリーが抽出された。 母親が搾乳を続ける体験は【いたみの体験】から始まり、その痛みの時期には積極的に搾乳しようとはせずに看護者から【いわれるがままの搾乳】をしていた。退院後、母親は頑張って搾乳を続けようとするが【搾乳の困難にぶつかる】体験をしていた。困難にぶつかった母親は【家族の助け】と【ポジティブな思い】を体験することで【自分のスタイルに合わせた搾乳】の確立を経験していた。その中の【ポジティブな思い】は母親が<児の成長を実感する>ことを通じて、NICU退院後の子どもとの生活を思い描き<ハッピーエンドへの期待>を持つことができていた。また、母親は早期から<搾乳することでの母親体験>をしており、夜間搾乳が段々と出来なくなることもポジティブに捕らえ<赤ちゃんが休ませてくれている>と母親は語っていた。 看護者からの3時間毎の搾乳提案は、母親の精神的・身体的負担になる可能性があり、本人の生活に合わせた搾乳の見直しの提案をする機会が必要である。また、家族に対して、搾乳時の支援を提示し、家族を巻き込んだ支援を実施することが急務である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の予定としては、1)インタビューガイドの作成、2)本学倫理委員会への申請、3)研究施設への協力依頼、4)予備調査、5)本調査であった。順番に達成度を報告する。 まず、1)インタビューガイドの作成に関しては、新生児看護学会・日本母性衛生学会学術集会へ参加し情報収集、意見交換を経て修正を加えて完成させた。次に2)東北大学大学院医学系研究科倫理委員会への申請を平成23年7月に行い、倫理委員会の承認を得た【承認番号2011-169】。倫理委員会承認後、3)研究施設への協力依頼を開始し、研究施設より研究協力の承諾を得て、調査を開始した。本年度は震災の影響を受けて、インタビュー開始時期が予定よりも遅れたが、一時的ではあったが、切迫早産の妊婦が多く搬送されたために対象者が多く得られた。しかし、震災の影響が強く心理的ダメージを受けた母親が多く、震災後の肯定的な体験が震災関連になってしまい、本来の調査目的とは違ってきたために、一時中断(6~9月頃まで)し再開をした。そのために、肯定的な体験の記述が十分ではないので、本年度に力を入れていきたい。 最後に、4)予備調査から5)本調査だが、3例の予備調査を実施し、インタビューガイドを微調整し本調査へ移行した。本年度は母乳分泌量が良好に保たれている母親の母乳分泌量が維持される要因のうち基本的な母親の搾乳体験について、インタビュー調査と分析を行った。その結果、6つのカテゴリーと15のサブカテゴリーが抽出され母親の搾乳体験が明らかとなった。その結果は第52回日本母性衛生学会にてポスター発表を行った。 全体を通してみると、東日本大震災で研究の中断を余儀なくされた時期もあったが、概ね予定通りに遂行できている。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は母乳分泌量が良好に保たれている母親の肯定的な側面に焦点を当て,母乳分泌量が維持される要因のうち基本的な母親の搾乳体験について、インタビュー・分析を行った。その結果6つのカテゴリーと15のサブカテゴリーとなった。今後は周囲(家族・看護者)から支持された体験と周囲から応援されていると感じた体験について分析を進めていく予定である。 研究対象者を10名程追加し、母親の肯定的体験を明らかにする。分析が主な作業となるが、分析の途中に母性看護の研究者からスーパーバイズをもらうようにし、信頼性と妥当性の確保に努める。 東日本大震災の影響も多少ならずとも残っていると考え、病院の臨床心理士とも連絡をとり、精神面のフォローが必要と判断した場合は紹介できるようにしていきたい。 学会発表を積極的に行い、第53回母性衛生学会学術集会(福岡)と新生児看護学会(熊本)、日本助産学会等での発表を予定している。」
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は当初計画していた、第16回日本助産学会学術集会への参加が平成24年5月1・2日となり、平成23年度中に行われないこととなり生じたものであり、平成24年度に参加予定であるので必要経費として、平成24年度請求額と合わせて使用する予定である。 また、次年度は研究成果の発表を第53回母性衛生学会学術集会(福岡)と新生児看護学会(熊本)での発表を予定している。母親の搾乳体験の全体像の発表と、母親の肯定的な体験を発表する予定である。両学会とも遠方のため、本年度は旅費を多く確保した。データのまとめをするために記録媒体の整備や文献などへの支出を多く見込んでいる。また、本年度中に研究成果の投稿する予定である。党綱領などへの支出が見込まれる。
|