研究概要 |
本研究の目的は,NICUに入院した新生児を持つ母親が母乳分泌量の維持の体験を明らかにすることである.本年度は母親が周囲の人々(家族や看護者)からの支持された体験を明らかにすることとした. 研究対象者は,妊娠23~32週未満で単胎を出産し,児がNICU入院中である基礎疾患のない初産婦で,産後1か月健診時に直接授乳を開始しておらず,母乳分泌量が500ml/日以上維持されている母親4名である.分析の結果,5つのカテゴリー,8つのサブカテゴリーに分けられた.以下,カテゴリーは【】,サブカテゴリーは〈〉で表す. NICU入院児を持つ母親は,初回面会時,最初のイメージよりも,姿,形,大きさが良い状態であったことで〈最初の安堵感〉を得ていた.また,児の動きや表情を見ることで〈児に出会えた嬉しさ〉を感じ【最初の肯定的な気持ち】を抱いていた. その後,面会を通して発見する〈目に見える児の成長〉や,〈面会中の児との水入らずの時間〉から母親は【自分の子どもとしての実感】を得ていた.よって,面会時に看護者は母親との関わりの中で母親の思いを傾聴し,傍に寄り添い受容することが重要である.その体験を通じで母親は,児の順調な成長を願い,児を〈大きくしないとだめという気持ち〉が強くなり,直接授乳ができない自分の立場から〈自分にできることは母乳を届けること〉という【母乳をあげたい】思いにつながっていた.それらの気持ちには,傍に寄り添い,最も身近な理解者である【夫からの支え】が大きく関係していた.夫は最も身近な支援者で良好な夫婦関係が母親の精神的安定に繋がると考えられる.よって,看護師には夫婦の関係性をアセスメントし,夫を巻き込んだ関わりが重要である.さらに,〈面会時間外の児の様子を聞く〉,〈母乳分泌をほめられる〉という看護者との関わりを通して,母親は【看護者からのサポート】を肯定的な体験としてとらえていた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,母乳分泌量が維持される要因のうちの,母親が周囲の人々(家族や看護者)からの支持された体験を明らかにすることに主眼を置いて研究を進めて行った。研究対象者が4名と少なくなってしまった。その原因として2点あげたい。 1点目として,早産と低出生体重児の増加が見られていたが,32~36週前後の早産児が多く対象となる23~32週の早産児の母親症例は減少していた.それに伴い,研究同意が得られた母親たちも減少し,研究対象者を集めることが大変だった. 2点目として,研究依頼施設での入院制限があったことが挙げられる.6か月間のNICU入院制限があり,対象要件である妊娠23~32週未満の早産児は半数近くが中核病院へ搬送となってしまった.そのために重症者の中から症例を選ばなくてはならず減少せざる負えなかった。しかし,4例でも1~2回の面接ができ、データとしては本人に再確認が取れたものとなった.対象者数は少なかったが,分析に時間がかけられてよかったと思う. その他に昨年度から継続してい進めている母乳分泌の維持要因に関しては,おおむね順調に進行していて,本年度はさらに12名追加インタビューができ,再分析中である.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は今まで得たデータを再分析をし,最終目標である母乳分泌維持に肯定的に働いた要因を明らかにしていく. 追加で,母親の体験を傾聴している中で「NICU初回面会時の体験」を語る方が多く,そこまでの看護者・家族とのやり取り,母親の揺れ動く気持ちについても分析したいと思う.それにより,児とNICUでの初回面会時までの母親の肯定的な体験が明らかになってくると思われる.この時期は搾乳開始の時期と重なるため,この初回面会までの時期(分娩直後から産後1日程度)の母親の体験を明らかにすることも母乳分泌維持への要因の一つではないかと考えた.その中には,バースレビューも含まれると思われる.早産児のバースレビューはあまり研究されていない分野なので,慎重に対応していきたい.必要に応じて,病院臨床心理士と連絡を取りながら進めて行く.
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