研究課題/領域番号 |
23660058
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
春名 めぐみ 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00332601)
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キーワード | 国際情報交換 / ノルウェイ / スウェーデン / 出産恐怖感 |
研究概要 |
出産恐怖感を測定する尺度Wijma Delivery Expectancy/Experience Questionnaire (W-DEQ) version A(産前)/ version B(産後)の日本語版を作成し、妥当性・信頼性に関する英語論文を国際学術雑誌であるNursing Health & Sciences に投稿し、受理・掲載された。 W-DEQ 日本語版は一定の因子妥当性が検証されているが、抽出された4因子の内、因子“Risk (出産時の母子の危険への恐れ)”で因子負荷量の高い項目が2項目と少なく、因子を説明するには不十分であるため、因子を強化するための項目の追加について検討を行い、候補となる6項目の追加項目を決定した。さらにそれらの候補項目について妊娠中後期の妊婦10名に回答を求め、項目の表面妥当性を確認した。今後、尺度の原作者であるWijma 氏らに再度許可を取り、項目を追加したW-DEQ日本語改訂版について、再度、妥当性・信頼性を検討していく予定である。 9月にはノルウェーのVestfold 大学にて、共同研究者であるSeverinsson教授らと研究ミーティングを行った。これまでの調査結果のまとめをし、今後実施予定である研究「出産恐怖感と心理社会的要因」のデザインについて検討した。その後、アンケート調査の実施に向けて、都内複数の産科医療施設との交渉や東京大学医学部倫理審査委員会へ倫理審査の依頼など具体的な準備を進めた。 また量的調査に先立ち、質的研究として、「出産への思いと体験に関するフォーカスグループインタビュー調査」を計画し、川崎市の助産院で妊娠中後期の妊婦を対象にフォーカスグループインタビューを実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画に沿って、研究を遂行し、国際学会での発表ならびに国際誌への掲載も行えた。海外共同研究者(ノルウェイ)や尺度の原作者(スウェーデン)との情報交換が継続的に実施できていることから、今後の調査の実施や結果のまとめについても、十分な成果が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
本邦において出産恐怖感の強い妊婦の心理社会的要因は明らかではなく有効なケアは、体系づけられていない。さらに妊娠期の出産恐怖感はストレスホルモンを上昇させ、胎児仮死などの異常をきたしやすく、緊急帝王切開などの産科的異常を引き起こすと報告されるが、本邦では十分に検証されていない。今後以下の4点を目的として研究を行うこととする。[目的1] W-DEQ version A/Bの改訂版を作成し妥当性・信頼性を検証する。妊娠後期と産後に、250名の日本人妊婦を対象にW-DEQ version A (妊娠後期)とversion B (産後)に回答してもらい妥当性、信頼性の検証を行う。 [目的2] 産前、産後の出産恐怖感に関連する心理社会的要因を検証する。妊娠後期と産後に約400名の日本人妊婦にアンケート調査を行い、関連要因を検証する。調査項目:出産恐怖感(W-DEQ version A/B)、属性、個人の低ストレス耐性(低Sense of Coherence、不安特性)、ソーシャルサポート(夫との関係)、過去のトラウマ体験、出産状況 [目的3] 出産恐怖感と分娩アウトカムとの関連性を検証する。妊娠後期に約400名の日本人妊婦にW-DEQ version A(出産恐怖感)に回答してもらい、産後に分娩アウトカム(帝王切開、器械分娩、胎児仮死等)についての状況をカルテから収集し、出産恐怖感と分娩アウトカムとの関連性を検証する。[目的4] 本邦における出産恐怖感の内容や有効なケアの在り方について質的検討を行う。都内複数個所の産科医療施設に通う妊婦を対象に出産への思いについてフォーカスグループインタビューを行う。出産恐怖感の内容および有効なケアの在り方について質的解析により検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
①フィールド調査にかかる費用(対象者への謝礼40万、資料代5万円、データ入力依頼5万円、交通費:8万円、会議費:2万円):60万円 ②国際学会17th International Congress of the International Society of Psychosomatic Obstetrics and Gynaecology (ISPOG) Berlin. での発表 (シンポジウム・尺度原作者とのミーティング)・渡航・滞在費:55万円
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