研究課題/領域番号 |
23660060
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
鈴木 泰子 信州大学, 医学部, 助教 (60283777)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 病気の子ども / 不確かさ / 相互理解 / 相互保護 / 情緒的関係性 |
研究概要 |
本研究では、まず、これまで行った研究において研究協力への承諾が得られていた当事者団体に対して、これまでの研究の進捗状況と本研究に関する新たな計画について説明を行い、今後の研究参加協力者を募っていくための連携体制づくりを行った。その上で研究協力者9名(高校生3名、大学生4名、社会人2名)に対する半構造化インタビューを行い、作成した逐語録をグラウンデッド・セオリー・アプローチに基づいてオープンコーディングを行った。分析の進行に伴い、小児看護学・心理学の研究で病気の子どもたちを対象として質的研究に携わる研究者のスーパーヴィジョンを受けた。また、病気のこどもの自分らしさの探索獲得プロセスについてのデータおよび分析プロセスを比較参照しながら、分析をすすめた。 この結果、病気の子どもの未来を拓くちからを獲得するプロセスについて、新たに抽出されたカテゴリーとして、≪他者との情緒的関係性の獲得≫≪健康を超えた相互理解と相互保護≫≪根源的な不確かさへの対処≫≪拡がりゆく感覚としての健康の獲得≫が得られた。病気のこどもの自分らしさの探索獲得プロセスに関するデータ及び分析結果との比較分析によって、病気の子どもにとって未来を拓くちからは人と関係し合い、獲得し始めた自分らしさをより強化しながら、獲得するものであること、即ち、病気の子どもの自分らしさの探索獲得プロセスが未来を拓くちからを獲得するプロセスにも関わっていることが示唆された。 今後は、さらにスーパーヴィジョンを受けながら、データの飽和化をめざし、新たなデータ収集と比較分析を進める一方、病気のこどもの自分らしさの探索獲得プロセスについてのデータ及びカテゴリー等についても、データ同士の比較や理論的比較等を行い、本研究全体の理論的サンプリングに反映させていき、病気の子どもが未来を拓くちからを獲得していくプロセスに関する理論形成をめざしていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、病気の子どもが療養生活を通して未来を切り拓くちからを獲得するプロセスを明らかにすることを目的として、理論形成をめざしている。23年度では、小児がん経験者である研究協力者に対して半構造化インタビューを行い、オープンコーディングを行い、理論的サンプリングに基づく比較分析を行うことを計画した。 23年度に行った理論的サンプリングによって収集したデータの比較分析を通して、22年度まで行っていた病気の子どもの自分らしさの探索獲得プロセスにデータやカテゴリーが本研究のプロセスに関連していることが示唆されたため、既存のデータから抽出されたカテゴリーを本研究で新たに収集したデータの分析に加えて比較分析をすすめた。この過程を通して本研究の目的としている病気の子どもが療養生活を通して未来を切り拓くちからを獲得するプロセスに、自分らしさを探索し獲得するプロセスが関わっていることが示唆されたことを受けて、23年度には新たなデータ収集をすすめる一方で、既存のデータの分析内容の確認と理論的メモの作成、理論的サンプリングを継続的に行い、新たなデータ収集にも反映させることができた。 本研究の目的を遂行するために、当初の計画でも23年度にはオープンコーディングを実施することを計画しており、実際には既存のデータ等との比較分析をより強化した形での研究実施になったとはいえ、今後の理論的サンプリングにとって有用な分析結果や示唆を得ることができたので、本研究の達成度としては概ね順調に進展しているものと評価された。
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今後の研究の推進方策 |
23年度に作成した理論的メモに基づき、理論的サンプリングを展開し、データ収集、分析をすすめていく。代表者の研究協力への承認の得られた団体に属する小児がん経験者に対して研究への参加を依頼し、研究目的・内容の説明を通して参加意思確認により承諾を得た人を研究協力者として、データ収集をすすめていく。 データ分析は、インタビューごとにすすめ、その際理論的メモをとっていく。研究プロセス全体を通して、病気の子どもに関する質的研究を行う研究者によるスーパーヴィジョンを、研究の進行に合わせて継続的に受けていく。 理論的サンプリングは、理論的メモを活用してスーバーヴィジョンを受けることで方向性を検討しながらすすめ、新たに加わったデータを含め、新たなカテゴリーの抽出につとめる。 さらに、データ同士の比較(同一データ内とデータ間)、理論的比較(データとアイデアの比較、カテゴリーとアイデアの比較)を行い、カテゴリー関連図の作成、現象毎の比較をすすめ、カテゴリーとサブカテゴリー間の関係性を明らかにしていく。 研究成果の公表については、今後の研究の進捗状況に合わせて随時行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度当初計画を実施していく中で、当初計画した以上に比較分析を進める必要性が病気の子どもを対象とした質的研究を行う研究者によるスーパーヴィジョンを受けながら実際に研究を行う過程で生じた。そのため当初予定を拡大してデータ収集をすすめ、併せてその分析を行うことになったため、当初計画では本年度末までに行う予定であった研究成果公表は次年度に入ってから行うこととなった。 次年度の研究費の使用計画として、まず旅費がある。これは、理論的サンプリングに基づいたデータ収集を行う際の旅費、インタビューごとに分析をすすめ、病気の子どもに対する質的研究を行う研究者による分析の進行に併せたスーパーヴィジョンを受けるための旅費、さらに研究成果の公表をするための学会参加に必要となる旅費と資料収集時の旅費であり、いずれも複数回での国内各地への旅費として計画している。 その他には、成果公表に関係する費用がある。これは論文雑誌投稿のための校閲料や投稿料、印刷費用の使用、学会発表時のポスターの印刷費といったものを計画している。 さらに物品費として、データ保管用の鍵のかかる保管庫、インタビューデータと研究協力者のコード表等各種データの保存のためのディスク類、データ整理・分析プロセスを通して用いるファイルや付箋、カード、のり、印刷用紙、各種筆記用具等、各種文具類の購入による使用も計画している。
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