研究課題/領域番号 |
23660060
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
鈴木 泰子 信州大学, 医学部, 助教 (60283777)
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キーワード | 病気の子ども / 不確かさ / 情緒的関係性 / 安全感 / 安心感 / 創造的学習 / 希望の強化 |
研究概要 |
昨年度に引き続き、病気の子どもが未来を拓くちからを獲得するプロセスに関するデータ収集と分析をすすめた。これまで研究協力への承諾が得られてきた当事者支援団体に対してさらに研究参加協力者を募り、随時研究参加への意思確認を行いながらデータ収集を行った。今年度は収集したデータごとに分析を行った際の理論的メモを活用して理論的サンプリングに基づき、順次データ収集を計画的にすすめていった。12名の研究協力者(高校生4名、大学生5名、社会人3名)に対して半構造化面接を行い、作成した逐語録から分析をすすめた。データの分析プロセスを通して随時小児看護学・心理学分野で病気の子どもを対象とした質的研究に携わる研究者のスーパーヴィジョンを受けながら、データ同士の比較、理論的比較を行い、カテゴリーの構造化を試みた。 子どもたちが未来を切り拓くちからの獲得には、【健康感覚の拡がりに関する気づき】【安全・安心であるという感覚の再構築】【さまざまな喪失の克服】【しなやかなちからの獲得】【自分自身の人生への希望の強化】【ケアリングパートナーシップにおける癒し】などのカテゴリーが【他者との情緒的関係性】【根源的な不確かさへの対処】とともに【人生の意味に対する創造的学習】と関連していることが明らかになった。これらを前年度に明らかにされていたカテゴリーと新たに抽出したカテゴリーを合わせてカテゴリーの構造化を行った。 今後は、データの飽和化をめざしてデータ収集をすすめ、これと並行してデータ同士の比較(同一データ内とデータ間)や理論的比較(データとアイディアの比較、カテゴリーとアイディアの比較)をすすめ、カテゴリー同士の関連を検討し、関連図を洗練したものとするとともに、病気の子どもが未来を切り拓くちからに関する理論の構築をめざしていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、病気の子どもが療養生活を通して未来を切り拓くちからを獲得するプロセスを明らかにすることを目的として、理論構築をめざしている。 23年度では、代表者に対して本研究の主旨を説明し承認の得られた団体に属する小児がん経験者を対象者にして半構造化インタビューを行い、収集したデータのオープンコーディングを行った。理論的サンプリングに基づく比較分析を行った結果、22年度まで行っていた病気の子どもの自分らしさの探索獲得プロセスへの関連が示唆されたため、既存のデータの分析内容の確認と理論的メモの作成を行い、この理論的メモに基づいた理論的サンプリングが新たなデータ収集に反映されるように努め、カテゴリーを抽出した。 さらに本年度では、23年度に作成した理論的メモに基づき、理論的サンプリングを展開し、データ収集・分析をすすめた。代表者に対して本研究の主旨を説明し、承認の得られた団体に属する小児がん経験者に対して、研究目的・内容の説明を行い、参加意思確認により承諾が得られた12名を本研究の研究協力者として、データ収集を行い、分析をすすめた結果、新たなカテゴリーが抽出された。この新たに抽出されたカテゴリーを含めて、データ同士の比較(同一データ内とデータ間)と理論的比較(データとアイディアの比較、カテゴリーとアイディアの比較)を行い、カテゴリー関連図を作成することができたことから、本研究の現在までの達成度としては、概ね順調に進展しているものと評価された。
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今後の研究の推進方策 |
理論的メモに基づいて理論的サンプリングを継続して行い、データ収集・比較分析をすすめる。これまでと同様、研究協力への承認の得られた団体に属する小児がん経験者に対する研究への参加依頼・説明を通して参加意思確認の得られた人を研究協力者として、飽和化をめざしてデータ収集を行う。データ収集を通して得られた新たなデータを加えて、昨年度作成のカテゴリー関連図との比較検討、データ同士の比較と理論的比較を行い、理論を構築をめざす。
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次年度の研究費の使用計画 |
論文の校閲は本年度の予定であったが、論文作成の進捗状況により、次年度使用額が生じるに至った。 他に次年度研究費使用計画には旅費があり、内訳としてはデータ収集の際と、スーパーヴィジョンを受ける際、成果公表のための学会参加、そして資料収集の際の費用が該当し、複数回での国内外各地への旅費として計画している。 さらに成果公表の際の投稿料、学会発表ポスター等の印刷費の他、物品費としてはデータ保存用のメモリ類、データ及び関連資料保存用のファイル類、及び付箋、ノート、メモ等による使用も計画している。
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