「愛着-養育バランス」尺度は、「適応:愛着(子どもへの依存)」「適応:養育(役割受容)」「敏感性:愛着(自分への関心)」「敏感性:養育(子どもへの関心と理解)」「親密性:愛着(自分に対する支え)」「親密性:養育(子どもへの愛情と支え)」の6因子のバランスから母親の養育者としての発達を測定する尺度である。 【研究1】尺度を用いての母親を対象とした産後1年6か月までの計5回の縦断調査が終了した。育児経験を積むことで「適応:愛着」は下降し、「適応:養育」「敏感性:養育」は上昇した。「敏感性:愛着」は経産婦および育児経験を積むことで上昇する傾向がみられ、「親密性:愛着」「親密性:養育」は育児経験による変動はほとんどなかった。5回のどの時期においても、愛着的因子は低く、養育的因子は高いという2相性の分布を示した。 【研究2】市の健診場面で尺度短縮版を活用してもらった。問診に関わった保健師の83.5%が概ね役立ったと回答しており、さらに要フォローケースと尺度6因子の関連から、健診での有用性が確認できた。 【研究3】産後3か月前後の母親へのグループインタビューを実施した。これまでを振り返ってもらい、不安だったことや「何を知っていたらよかったのか」の本質を抽出した。 乳幼児期の母親の養育者としての発達過程が明らかにできたが、影響要因との関連については今後さらに検討していくことが必要であり、特に介入できない本人の気質的な部分との関連を明らかにすることで、それぞれの母親に合わせた対応ができると考える。尺度短縮版を作成したことで健診場面で活用しやすくなり、今後は具体的な活用について進めていきたい。看護者の産後入院中の母親への関わりに対する意識と、産後の母親の不安および求める支援の本質を抽出したことから、その本質への支援に結びつくパンフレット作成のための基礎資料を得ることができた。
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