本研究目的は、授乳時の母親の視線を眼球運動計測器によって計測し、それら特徴を活用した授乳指導方法の開発を試みることである。平成25年度実績概要は以下のとおりである。 1.視線データ収集及び分析 初産婦3名の視線計測を実施し、前年度までのデータと合わせ、計9データの分析を行った。分析区間を1)授乳開始から乳児が乳房を含むまで、と2)乳児が乳房を含んでから母親が適切に吸い付いていると判断するまでの2時期に区分し、各時期の注視点分析を行った。データに共通する注視点を乳児の側頭部、乳児の目、乳児の鼻、乳児の口、乳児の顔と乳房が向かい合う間の領域、乳児の口と乳房が接する領域、母親の乳輪、母親の乳頭、母親の乳房の9領域に分類した。授乳開始から乳児が乳房を含むまでに注視回数割合が大きかった領域は、乳児の顔と乳房が向かい合う間の領域18.1%、乳房16.0%であった。また、注視時間割合が大きかった領域は、乳房28.4%、乳児の目13.2%であった。乳児が乳房を含んでから母親が適切に吸い付いていると判断するまでに注視回数割合が大きかった領域は、乳児の口と乳房が接する領域33.0%、乳房17.0%で、注視時間割合も乳児の口と乳房の接する領域38.6%がもっとも大きかった。乳児に乳房を速やかに適切に含ませるために、母親は乳児や乳房またはその両方が視野に入る中間地点を注視し、乳児が乳房を適切に含んでいるかどうかを判断するために乳児の口と乳房が接する領域を注視する傾向があることが示唆された。授乳指導では上手に授乳を行うことができる代表的な母親の視線の動きを、その意図とともに学習者に視覚教材として提示することが有用なのではないかと考える。 2.研究成果の公表 第33回日本看護科学学会学術集会および第28回日本助産学会学術集会にて示説発表を行った。今後本研究成果を論文発表する予定である。
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