調査者は高機能自閉症児の適切な育児のためには、母親をとりまく人々からの支援の提供(ソーシャルサポート)が母親の育児負担軽減につながると考え、前年度に高機能自閉症児をもつ母親へのソーシャルサポートを調査した。その結果、母子の身近な人からの理解や母子の身近な人からの養育支援が見いだされ、高機能自閉症児の母親が不足と感じるものとして高機能自閉症児に対する理解不足が見いだされた。このことから、高機能自閉症児の母親の身近な人々からの理解やサポートを得るために、地域の(母親)人向けの学習支援ガイドの検討が必要とされた。今年度は高機能自閉症児の母親をとりまく同級生父兄(母親ら)による高機能自閉症児と母親への理解の程度および支援可能な内容の実態調査と示唆から支援ガイド作成の方向性の検討を目的として研究を行った。 まず、近年における研究動向と課題等を確認するために高機能自閉症の幼児・学童の母親のソーシャルサポートに関する文献検討を行った。過去10年間のソーシャルサポート、自閉症スペクトラム障害、親を検索語にした研究論文を検索し、最終29件を分析対象とした。結果、児の就学後の学校生活支援に関する調査は少なく、精神発達遅滞がない自閉症児の母親のストレスがより高いことが確認された。今後の支援の課題は学童期の高機能自閉症児と母親支援の必要性が見いだされた。今年度の後半には、1~4年生の学童をもつ母親に高機能自閉症児と母親への理解の程度と実施可能な支援の実態調査を行った。日本全国の小学校1000校を無作為抽出し調査協力を依頼、113校1269通(58.5%)の返送を得て、1220名を分析対象とした。対象の母親の平均年齢は38歳であった。母親らは身近な人が助けを必要としている時に55%が手助けする事を、またお母さんの悩みを聞くと41%が回答した。事例で高機能自閉症の特徴を確認すると57%認知していた。
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