本研究は、第2子以降の出産に際して上の子どもを出産場面に参加させた母親の体験と、母親の出産場面に立ち会った子どもへの影響を明らかにすることを目的とした縦断的継続研究の一部である。今回の研究目的は、就学前に出産に立ち会った子どもが青年期に達するまでの過程における母親と立ち会った子どもの生活体験と家族関係について、質的記述的研究により明らかにすることである。 対象は上の子どもを家族立ち会い出産に参加させ、継続して研究対象となった母親と子どものうち本研究への協力を承諾したものであり、これまで母親6名と子ども7名の調査を実施した。母親の年齢は41歳から50歳で平均46.5歳であり、立ち会った子どもは17歳から20歳で平均18.7歳であった(今年度の面接時の年齢)。 母親から出産前後の記憶が断片的に表現され、内容は過去の面接時の表出内容と一致していた。母親は日常生活を通して出産への立ち会いに起因すると思われる子どもの言動を確認しており、当初3歳以上の場合現在も記憶が残っていると考えていた。全員の母親が子どもとの間に出産にまつわる共通体験をもてたことを肯定的に評価しており、性に関する態度や、結婚・出産に際して話し合うための基盤になる体験だと表現した。 また、母親は家族ぐるみの出産体験が家族の絆を強めたと表現しており、「『運命共同体』と思える出来事」「家族にとってメンテナンスとなる体験」と表現し、その後の生活過程において家族全体や自分自身を支える役割を果たしてきたと意味づけるものもいた。 3歳以上の子どもは出産前後の出来事を断片的に記憶しており、「赤ん坊を抱いた時の重さ」「お臍の固さ」といった感覚や、「嬉しかった」「可愛がってやろうと思った」といった情動を伴う体験として表現された。全員が、学校教育の中で関連する知識の習得と共に立ち会い体験を想起して知的な理解を深め、体験を再統合していた。
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