目的:本研究は、1.救命救急センターに入院した自殺未遂患者の急性期における家族の心理的変化を明らかにする。2.自殺未遂患者の家族が必要ととらえた急性期の援助を明らかにする。3.急性期における効果的な医療関係者の援助を明らかにする。を目的に行った。76名の患者の入院記録に記載された家族の思いを抽出し、かつ5名の家族を対象とした面接により得られた情報を分析した。 結果:家族の心理的変化としては、入院前期に「驚き・衝撃」「状態に対する心配」「回復への願い」「自責感」という思いが認められ、入院中期は「世間体への恐れ」「命の尊厳」という思いが認められた。入院前期から中期にかけて「自責感」が、入院後期に「無力感」が認められ、入院全期に認められた思いは、「今後の不安」「安堵感」「患者支援の願望」「患者に関わることへの躊躇・困難さ」であった。企図回数別でみると、複数回の自殺企図者の家族には、「世間体への恐れ」「命の尊厳」「自責感」の思いは認められなかった。家族の思いが変化していくことならびに、具体的な家族の思いが明らかになった。 家族が必要と捉えた急性期の援助は、患者の状態の説明、患者との関わり方、家族の精神的支援、信頼できる医師の患者に対するサポート、退院後注意しなければいけない患者の言動についての説明、退院前の試験外泊、入院費用についての説明であった。 家族が捉えた効果的な医療関係者の援助は、患者の状態についての医師からのわかりやすい説明、状態が安定しているという看護師からの説明、患者の精神面への考慮、笑顔で親切な対応であった。 今回の研究により、初めて自殺未遂患者の家族の心理的変化が明らかになった。今回の結果をもとに入院時期に応じた家族への援助につなげることで、家族の心理的安定を図ることが出来、その結果家族が患者の再企図防止にむけた関わりができることに繋がると考える。
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